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約25年にわたる創薬で、レカネマブの第3相大規模臨床試験に成功。トップに立って35年になる名物経営者は今後、どんな会社を目指すのか。内藤晴夫 エーザイ代表執行役CEOに聞いた。

(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行、編集委員 橋本 宗明)

(写真=山下 裕之)
(写真=山下 裕之)
PROFILE

内藤晴夫[ないとう・はるお] 氏
エーザイ代表執行役CEO
慶応義塾大学商学部を卒業し、1974年ノースウエスタン大学経営大学院を修了(経営学修士を取得)。75年にエーザイ入社。88年代表取締役社長、2004年代表執行役社長(CEO)、14年から現職。日本製薬工業協会副会長、日本製薬団体連合会会長などを歴任。06年から内藤記念科学振興財団理事長も務めている。

レカネマブの第3相臨床試験で、早期アルツハイマー病患者の症状の進行を18カ月で27%抑制する結果を示しました。ここまでの開発の苦労を踏まえ、結果をどう受け止めていますか。

 サンフランシスコの学会には0泊3日で参加してきたのですが、長い間、論争になっていたAβ仮説が真実であると公に認められたのは大きいです。もう一つ、「27%の進行抑制」というのは意味があるのかが議論になっていますが、いつも現場で患者に接しているカナダの研究者に学会で臨床的に非常に意義があると言っていただいた。

 それから、『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』という権威ある米医学誌に結果が掲載されました。データの透明性と客観性が認められなければ掲載されません。今後の当局による承認審査や保険償還の議論の中で非常に重要なポイントになると見ています。そこに向けて大きく前進できたと思っています。

実用化に向けて、手応えは。

 承認は審査当局が決めることですが、我々としては大きな自信を持っています。

認知症関連の国際学会などにも積極参加している(右端)。左端はAβ仮説を提唱した英ロンドン大学のジョン・ハーディー教授
認知症関連の国際学会などにも積極参加している(右端)。左端はAβ仮説を提唱した英ロンドン大学のジョン・ハーディー教授

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