沖縄県が日本に復帰して50年たつが、1人当たり県民所得は全国で最下位のまま。製造業が根付かずに観光業に依存した結果、低賃金が課題となっている。これは沖縄固有の問題ではない。観光立国を目指す日本にとって、直視すべき課題だ。

(写真=PIXTA)
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 全国的に製造業・建設業など第2次産業が伸び悩むなか、観光業に成長を見いだそうとしている日本。その点、もともと製造業比率が低く、観光業への依存度が高い沖縄の現状は、日本の将来の姿を暗示している。

 新型コロナウイルス流行前、沖縄の外国人観光客の伸び(2003年比)は、全国平均の5倍を記録した。好況だったにもかかわらず、沖縄の子供の貧困率は全国平均の2倍近い。背景には、稼いだ収益が地元に還元されない「ザル経済」の問題がある。沖縄のホテルの多くを本土(県外)資本や外資が占め、利益が外に漏れ出ている。この構図は日本全国でも起こりかねない。円安で割安となった日本の資産を、外資が虎視眈々(たんたん)と狙っているからだ。

沖縄企業がファンド立ち上げ

 ザル経済に対する問題意識から、20年5月、沖縄の有力企業17社が出資したファンド運営会社・琉球キャピタル(那覇市)が設立された。旗振り役となった琉球銀行の川上康頭取は「県外資本や外資に流出しかねない資産を県内資本で買い支え、利益を地域に還元する」と狙いを語る。

琉球銀行の川上康頭取。投資ファンド運営会社の琉球キャピタルを立ち上げ、第1号ファンドには県内企業から64億円が集まった(写真=前新 直人)
琉球銀行の川上康頭取。投資ファンド運営会社の琉球キャピタルを立ち上げ、第1号ファンドには県内企業から64億円が集まった(写真=前新 直人)

 川上氏の原体験は、融資を担当していたバブル期まで遡る。県内企業に融資し、リゾート施設ラッシュに沸いたが、バブル崩壊でその多くは県外や外資企業の手に渡った。川上氏は「金融危機がなければ我々が支え、県内に残せたはず」と悔やむ。

 頭取就任後の18年夏。川上氏はインバウンド好調のただ中、小さな異変に気付く。韓国との政治的な関係悪化による旅行客の減少だ。「ホテルが売りに出されるかもしれない。県内資本で買い戻すチャンス」と考え、ファンドの構想を練り始めた。

 もっとも、現実は川上氏の想定をはるかに超えた。20年初頭からのコロナ禍で、県内企業も含めて業績が一気に悪化。県外資本から資産を買い戻す以前に、県内資産の県外流出が表面化したのだ。そこで当初の計画を早めて立ち上げた。まずは沖縄を代表する旅行会社・沖縄ツーリスト(那覇市)へ出資し、県内のホテル運営会社・かりゆし(恩納村)からホテル2棟を譲り受けた。

 県外資本からの資産買い戻しという悲願が実現したのは21年9月末。全国に展開する「センチュリオンホテルズ」が撤退を検討していたリゾートホテルを取得した。1975年の沖縄国際海洋博覧会に合わせて開業し、当時の皇太子さま(現在の上皇さま)が宿泊されたという、地元にとって誇りの一つだったホテルだ。

琉球キャピタルが取得した「ロイヤルビューホテル美(ちゅ)ら海」の運営を引き受けたゆがふホールディングスの前田貴子社長(写真=前新 直人)
琉球キャピタルが取得した「ロイヤルビューホテル美(ちゅ)ら海」の運営を引き受けたゆがふホールディングスの前田貴子社長(写真=前新 直人)

 運営は沖縄本島北部で建設業やホテル業を営む、ゆがふホールディングス(HD、沖縄県名護市)が引き受けた。前田貴子社長は「私自身、子供の頃からなじみがあるホテル。コロナ禍で苦しいが、地元企業で運営したいと手を挙げた」と話す。

 県内資本になったのを機に、15年ぶりに開業時の名称「ロイヤルビューホテル」を復活。「慣れ親しんだ名前が戻ってきて、本当にうれしいという声が地元から届く」。総支配人を務める饒波(よは)正仁氏はそう話す。

 ゆがふHDは近隣で大規模ホテルや商業施設を運営しており、各施設を巡回する無料送迎バスを運行。閑散期にはレストランの営業を休止して系列ホテルの利用を案内するなど、効率的な運営にもつなげている。

「ロイヤルビューホテル美ら海」の総支配人に就任した饒波(よは)正仁氏
「ロイヤルビューホテル美ら海」の総支配人に就任した饒波(よは)正仁氏

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