にわかに1ドル=150円台まで進んだ円安。日本銀行の金融緩和政策が改めて問われている。政府との二人三脚で10年続いた異次元緩和は、果たして有効だったのか。世界経済が激変する中、中央銀行としての新たなあり方が問われている。

(写真=つのだよしお/アフロ)
(写真=つのだよしお/アフロ)

「金融緩和の影響、効果がどうだったのかという検証をやるべきだ」──。10月20日、日本商工会議所の三村明夫会頭(10月末で任期満了)からこんな声が上がった。

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 2022年に入り急激に進んだ円安で原材料やエネルギーなどの輸入コストが上昇し、多くの企業の負担になっている。6月に経済同友会がまとめたアンケートでも、7割を超える企業が「円安は日本経済にマイナスの影響」と回答。三村氏の発言は、この円安の要因の一つが日銀の金融緩和にあるとの問題提起だ。業績には円安がプラスに働くとされるトヨタ自動車の豊田章男社長も、9月の記者会見で「円安のデメリットが拡大しているのが現実」と指摘した。

 こうした企業の声を受け、政府も動き始めた。9月22日と10月21日に相次ぎ円買い・ドル売りの介入を実施。投機筋による急激な円安進行をけん制する。

変えられない金融緩和路線

 為替介入はけん制にすぎず、円安水準の是正に効くかどうかは不透明だ。市場が本質的な円売り材料とみているのは、日銀の金融緩和政策。為替介入はあくまで政府が決断し、日銀はその指示に従って動くだけだ。日銀が主体的に動ける金融緩和で手を打たないのは「矛盾している」(外為ストラテジスト)ようにも見える。

 それでも「日銀は動きそうにない」(大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミスト)。これが、日銀ウオッチャーの間のコンセンサスだ。欧米など海外で進行する高インフレ対策の金融引き締めで、近い将来に世界経済が減速や不況に陥る可能性が高い。その中で経済を支えるためには、日銀は金融引き締め方向の政策修正をしづらいとの判断だ。

(写真=共同通信)
(写真=共同通信)

 黒田東彦総裁は10月中旬、国会で改めて「金融政策は為替相場を直接のターゲットとするものではなく、その影響も含めて全体としての経済・物価情勢の評価に基づいて行うもの」と強調。「金融緩和を継続することで経済をしっかりと支え、賃金上昇を伴う形で物価安定目標の持続的・安定的な実現を目指すことが適当」と語っている。

 結果として、日銀は緩和を維持し、円安などに起因するコスト高対策は財政で手当てするという「役割分担路線」になっている。米国でインフレが沈静化したり、景気後退に陥ったりして利上げ打ち止めにめどがつくまで耐える戦略とも言えるが、現実は危ういバランスの上で成り立っている。「異次元の金融緩和」を続けた副作用が蓄積しているためだ。