この記事は日経ビジネス電子版に『セイコー、脱・時計頼みへ 覚醒したIT子会社、合言葉は「自燃」』(6月29日)、『セイコーが志す第2の創業 医療やインフラ… 社会課題の解決役に』(6月30日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』7月4日号に掲載するものです。今記事と連動の編集長インタビュー『セイコーホールディングス会長・服部真二氏「信用と信頼の文化つなぐ」』も合わせてお読みください。

創業141年を迎えたセイコーホールディングス(HD)が脱「時計頼み」を急いでいる。目指すのは、顧客や社会の課題を解決するソリューションカンパニーだという。DX(デジタルトランスフォーメーション)を推し進め、第2の創業に挑む老舗の今に迫る。

セイコーと言えば「時計の会社」。そんなイメージを覆すことによる再成長へ改革を進める(東京・銀座のセイコーHD本社)
セイコーと言えば「時計の会社」。そんなイメージを覆すことによる再成長へ改革を進める(東京・銀座のセイコーHD本社)

 「山のような書類を処理する手間が減り、業務の効率化が進んだ」「顧客の個人情報を安全に管理できて助かっている」──。

 電子データがある時刻に存在していたことや、それ以降改ざんされていないことを証明する「タイムスタンプ」。情報の電子化に欠かせないこの技術で、セイコーが国内シェア66%(2020年)とトップを独走している事実はあまり知られていない。

 日本データ通信協会(東京・豊島)によると、20年の認定タイムスタンプ発行件数は3億6100万件と、17年比で倍増した。その後も企業のDXに伴い、引き合いは強まっているとみられる。首位セイコーのシステムでは記録ミスなど時刻に関するトラブルは起きていないといい、顧客からの信頼は厚い。

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