この記事は日経ビジネス電子版に『事業承継サービス最前線』(2月28日~3月7日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』3月14日号に掲載するものです。

後継者不足に新型コロナウイルス禍が重なり、事業の継続をあきらめる企業が目立つ。事業承継が一層課題となり、大学や企業が新たなサービスに知恵を絞り始めた。欧米の手法を活用するなど先進事例が増えており、承継が進む一助となりそうだ。

 受講料660万円、親子対話を促してファミリービジネスの承継を支援する──。早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センターが合宿制で開く予定の高額プログラムが、企業関係者らの注目を集めている。

同族経営にターゲット

 正式名称は「ファミリービジネス経営革新プログラム」で、売上高がおおむね300億円以上などの応募資格を満たした同族企業が対象だ。4カ月の間、4社限定で参加する。1社最大4人のメンバーとし、世代交代を控えた親子に加え、事業にかかわる親族らも加わることができる。

 この企業向け教育サービスの目玉はワークショップで、受講者が様々な形で討議する。参加企業の経営テーマについての討議のほか、企業の枠を超え「親世代だけ」「子世代だけ」でも議論する。ファミリービジネスといっても、会社や家庭内で真剣な対話がなされない例が多い。事業が行き詰まって悩むケースも目立ち、ワークショップでは講師が第三者として対話を促す。

 合宿しながら複数のファミリービジネスの経営者が事業承継について学ぶプログラムはスイスのIMDや、米ハーバード大学などのビジネススクールで実績がある。宿泊代別で1000万円を超えるケースが多い。

長谷川氏も同族承継の専門講座で教える
長谷川氏も同族承継の専門講座で教える

 早稲田大学国際ファミリービジネス総合研究所長の長谷川博和教授は「専門的で、一方通行ではないプログラムを豊富にそろえた」と自信を示す。2022年1月スタートの予定だったが、コロナ禍で延期。今春以降に実施する方向で調整している。

 早大以外でも、例えば東京大学の経済学研究科金融教育研究センターが18年に「日本経済を支えるファミリービジネス──地方創生の主役」とするセミナーシリーズを開催。教育界では事業承継に向けた積極的な取り組みが目立つ。背景にあるのは事業承継難の深刻化だ。

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 国の試算によると、中小企業・小規模事業者のうち経営者が25年に70歳を超える企業が約245万社。約半数に当たる127万社の後継者が未定で、さらにそのうち約60万社が黒字のまま休廃業・解散に追い込まれる恐れがある。中小企業は同族経営の場合が多いが、帝国データバンクの調査によると同族承継の比率は下がり続けている。経営者の高齢化、同族内の後継者不在により廃業が進む。

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 日本経済の大きなピンチだが、その分、解決に向けたビジネスの種が転がっているともいえる。その象徴がM&A(合併・買収)の活発化だ。