この記事は日経ビジネス電子版に『トマト、マダイ、トラフグ……、ゲノム編集食品が市場へ』(2月7日)などとして配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』2月14日号に掲載するものです。
生物の遺伝情報であるゲノムをピンポイントで書き換えるゲノム編集技術。この技術を使って品種改良した農水産物が、事実上の販売認可を得始めた。SNSなどで認知され、オンライン中心で販売され、一般の食卓に上っている。

生物の遺伝子を操作する最新技術、「ゲノム編集」を利用した野菜や魚類が国内で流通し始めた。
2021年9月、種苗会社のパイオニアエコサイエンス(東京・港)が機能性成分「γアミノ酪酸(ギャバ)」の含有量を増やしたギャバ高蓄積トマトの販売を開始。水産ベンチャーのリージョナルフィッシュ(京都市左京区)は、21年10月に肉厚にした可食部増量マダイ、11月には成長力を高めたトラフグの流通を開始した。
ゲノム編集とは、生物の遺伝情報が書き込まれた「ゲノム」の特定の部分をピンポイントで切断し、情報を書き換える技術だ。従来、親同士の交配により時間をかけて行っていた品種改良を、短期間で効率よく行える技術として注目されている。
遺伝子を操作する技術としては、1970年代に遺伝子組み換え技術が登場したが、こちらは外来の遺伝子の導入を伴う。対して、ゲノム編集の場合は上の図のSDN-1のように、生物がもともと持つ遺伝子を働かなくするだけの操作も可能だ。このような変化は自然界でも起こり得るため、外部からの遺伝子導入を伴わない場合は、日本では遺伝子組み換えに該当しないと見なされた。ただし、規制の在り方は国・地域で違いがあり、欧州ではゲノム編集した作物は遺伝子組み換え作物として扱われる。
日本での規制については2019年に、厚生労働省、消費者庁、農林水産省がそれぞれ通知を出した。遺伝子組み換えでないものは、食品としては厚労省に届け出ればよく、「安全性審査は不要」とされた。ゲノム編集食品である旨を表示する義務もない。生物多様性の観点から、農水省への情報提供は求められる。
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