この記事は日経ビジネス電子版に『中国と頂上決戦、日本製鉄が挑む「ゼロカーボン・スチール」』(1月17日)などとして配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』1月24日号に掲載するものです。

「2050年にカーボンニュートラル」の目標は、今までの延長線上では達成できない。産業活動やインフラなどで、これまでの常識を覆す技術的ブレークスルーが必要だ。製鉄、半導体、微生物発電……。日本企業が取り組む画期的技術開発を紹介する。

 2050年に目指す脱炭素を成し遂げるには、これまでの常識を覆す革新的なテクノロジーを生み出さなければならない。高い壁を越えたその先には化石資源に依存しない新たなゼロカーボン社会の地平が開く。そう信じて「緑の超絶技術」の開発に打ち込む企業の挑戦を見てみよう。

ゼロカーボン・スチール 日本製鉄

 東京湾岸沿いにある日本製鉄の中核生産拠点、東日本製鉄所の君津地区。「次はこんなでかい商業炉に挑むのか」。技術開発本部プロセス研究所の熊岡尚・試験高炉プロジェクト推進部長はこのところ、試験高炉の近くにそびえる巨大な第4高炉を見上げるたび、背筋が伸びる思いになる。

<span class="fontBold">日鉄は今後、巨大高炉(上)で水素還元技術を試験する。試験高炉(下)の400倍の大きさだ</span>
日鉄は今後、巨大高炉(上)で水素還元技術を試験する。試験高炉(下)の400倍の大きさだ

 日鉄は50年の脱炭素という目標を掲げ、温暖化ガスを排出しない「ゼロカーボン・スチール」実用化を目指している。君津地区の北西端にある試験高炉では、その一つの技術である「高炉水素還元製鉄」に挑んでいる。鉄鋼のもととなる銑鉄を生産する過程で水素を吹き込んで二酸化炭素(CO2)排出を極限まで減らす。22年1月7日、政府のグリーンイノベーション基金事業に採択されたと発表し、その成果をいよいよ商業用の高炉で試そうという段階に入った。

 試験高炉の内容積が12m3なのに対して、商業用の高炉は約5000m3とおよそ400倍。炉の直径も15倍にスケールアップする。高炉内の温度は2000度以上になり、銑鉄は真っ赤に溶け、すさまじい勢いで高温ガスが渦巻く。その灼熱(しゃくねつ)の中に、爆発リスクのある水素をどのように吹き込むか。また水蒸気が発生する「吸熱反応」によって炉内の温度が低下しないようにするにはどうするか。