この記事は日経ビジネス電子版に『サイバーエージェントの成長が続くワケ(1)(2)(3)』(1月6日~10日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』1月17日号に掲載するものです。
サイバーエージェントはインターネット産業で日本を代表する企業の一つになった。ネットテレビ「ABEMA」の印象が強いが、屋台骨はネット広告とスマートフォンゲームだ。ある危機を経てテクノロジー路線に転換。変わらぬベンチャー精神との両輪で好循環を描く。

「ではインターフェースの振り返りから始めます」。2021年11月、サイバーエージェントがオンラインで開いたプログラミングのセミナー。参加者20人が講師の説明に聞き入っていた。
セミナー「Go アカデミー」は同年に始めた採用活動だ。ネット広告やゲームの事業で使うプログラミング言語「Go」について3カ月間、指導する。セミナーには入社に興味のある人や、新たなキャリアを模索している人ばかりを集め、成績優秀者は入社試験の最終面接にいきなり招く。
エンジニアを確保し、育てなければ成長はない──。手間のかかる採用方法にはそんな覚悟が表れている。
電通と競り合う時価総額
同社の21年9月期連結の売上高はゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」がヒットし、20年9月期と比べ39%増の6664億円、営業利益も3倍の1043億円となった。いずれも過去最高だ。国内最大手のネット広告は売上高全体の48.2%、ゲームが39.4%を占める。
時価総額は21年12月末時点で9679億円に上る。広告業界のガリバー、電通(1兆1800億円)と競り合い、博報堂DYホールディングス(7464億円)よりは高い水準が続く。
8経営を全体として見たときに目立つのは、長期の成長を実現していることだ。1998年の設立以来、23期連続で増収が続く。要因として、AI(人工知能)などテクノロジーの力を高めている点は見逃せない。冒頭の力の入った採用もその一環だ。
大黒柱のネット広告事業で、実力への評価が年々高まっている。クレディ・スイス証券の斎藤剛アナリストは「技術力は電通や博報堂を含め業界で最も高い」と話す。ネット広告の市場規模は2019年にテレビ広告を抜いており、その意義は大きい。
サイバーエージェントは広告代理店として様々な役割を担う。企業の依頼を受けて広告を制作したり、米グーグルや米フェイスブック(現メタ)、ヤフーなどに広告を配信したりする。
サイバーエージェントが強みを発揮しているのは広告制作だ。ネット広告では、機動的に出稿金額や広告内容を変更できる「運用型広告」が主流。個人の属性や、パソコン・スマホといったデバイスに応じて広告内容を変えることも可能だ。
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