この記事は日経ビジネス電子版に『タイパ時代のマーケティング(1)(2)(3)』(1月4~6日)として配信した記事に追加・再編集して雑誌『日経ビジネス』1月10日号に掲載するものです。
映画のあらすじと結末を紹介する10分ほどの動画「ファスト映画」に人々が群がった。「無料だから」と断じるのは早計だ。時間対効果を重視する消費傾向の表れでもある。消費者の変化にいち早く気付いた企業が「時間」を軸にした差異化に取り組み始めた。
「懲役2年、執行猶予4年、罰金200万円」。2021年11月16日、仙台地方裁判所は著作権法違反の罪に問われた札幌市の25歳の男ら3人に有罪判決を言い渡した。
この裁判が注目されたのは、「ファスト映画」と呼ばれる10分程度の動画をめぐる国内初の判決だったからだ。ファスト映画とは、映画の本編の映像や静止画を使いながら、字幕やナレーションをつけて全体のストーリーを把握できるようにした10分程度の動画の通称。著作権を持つ映画会社などに無断で制作し、「ユーチューブ」などの動画投稿サイトで公開して収入を得ている者が多い。
有罪判決を受けた3人は、東宝の「アイアムアヒーロー」や日活(東京・文京)の「冷たい熱帯魚」などのファスト映画を制作して20年6~7月に5本をユーチューブで公開。宮城県警・塩釜署の捜査員が動画を発見し、21年6月に3人を逮捕した。
今回の裁判で映画会社側の権利の取りまとめなどを担当したコンテンツ海外流通促進機構(CODA)の後藤健郎代表理事は「コロナ禍の巣ごもり需要で動画を見る人が増えたのに伴い、ファスト映画の投稿が盛んになった」と指摘する。21年6月時点で、CODAは55のアカウントによる2100以上のファスト動画の新規投稿を確認したという。
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