この記事は日経ビジネス電子版に『グリーン建設』として配信したシリーズ記事(12月6~9日。第1回はこちら)を再編集して雑誌『日経ビジネス』12月13日号に掲載するものです。
計画から竣工まで時間がかかる建設業界にとって、2050年は近い未来だ。五輪特需が終わり業界が冷え込む中、脱炭素で出遅れれば淘汰される可能性もある。「創」「蓄」「省」をキーワードに建設各社が自ら技術開発を主導しようと動き出した。

山形県の新庄駅から車でおよそ30分。最上川の支流、銅山川が流れる大蔵村の山あいに、知られざる「日本最大級」の施設がある。
一見すると、何の変哲もない砂防ダム。土砂災害を軽減するために下流に流れようとする土砂を貯留するものだ。その砂防ダムの下流に向かって左手(左岸)に、周囲をコンクリートの壁で囲まれた施設があった。これが、2021年9月に稼働を始めた小水力発電所「おおくら升玉水力発電所」だ。銅山川の水流を利用して年間約3500メガワット時を発電する施設で、発電量は一般家庭1200世帯分に当たる。
何が日本最大級なのか。砂防ダムに開けた穴の大きさだ。開口部の大きさは幅3~4m、高さは1.8mある。穴を大きくするほど利用できる水流は増えるが、難度が跳ね上がっていく。「安全のための設備である砂防ダムに大きな穴を開けるのは常識外れ。最新の手法を使って強度を綿密にシミュレーションしながら設計する必要がある」。計画に参加した建設コンサルティング会社、日本工営(東京・千代田)エネルギー事業統括本部の小長谷修氏はこう話す。
そこまでして小水力発電所の事業に取り組むのは、「カーボンニュートラル」の嵐が建設業界にも吹き荒れつつあるからだ。
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