農家との接点、開発の強み

 スマート農業を推し進める上での強みは、農家との接点の多さだ。20年度の売上高でみた国内の事業規模はヤンマーホールディングスの3875億円や井関農機の1159億円を圧倒。国内に13社の販売会社と約800カ所に上る営業拠点を構える。

 農家との付き合いは濃密だ。220ヘクタールの耕作地でコメや小麦、大豆を生産するアグリ知立(愛知県知立市)の高村昭広社長は、クボタの販売会社の営業担当者を「うちのメカニック」と呼ぶ。

 アグリ知立のメカニックこと東海近畿クボタ安城営業所の五十嵐貢所長は、ほぼ毎日、有力顧客であるアグリ知立を訪れ、農機の故障に対処したり、トラクターでけん引する作業機械の改良の相談に乗ったりする。繁忙期には農機の運搬を引き受けることも。至れり尽くせりの対応だ。

 農家にとことん寄り添う姿勢は開発現場にも浸透している。象徴的なケースがGPS(全地球測位システム)を活用した直進維持機能付き田植え機の開発だった。

 きっかけは北海道の販売会社からの連絡だった。「お客さんが自動操縦の田植え機を開発したらしい」。移植機技術部で管理チーム長を務める吉田和正氏が訪問先で目にしたのは、海外製のGPSと連動する制御装置を取り付けた改造田植え機だった。

 当時、耕作面積が狭い国内では、直進制御機能はさほど需要がないとみていた。しかし、「何とかこれを製品化してほしい」との直談判を受けて、吉田氏は考えを改めた。

 13年に先行研究に着手。実際に全国の顧客の水田を借りて実証実験を繰り返した。1月末の沖縄県石垣島に始まって5月中旬の北海道まで田植え前線が北上するのを追いかけた。

<span class="fontBold">直進維持機能付き田植え機の開発では、農家の水田を借りて実証を重ねた</span>(写真=菅野 勝男)
直進維持機能付き田植え機の開発では、農家の水田を借りて実証を重ねた(写真=菅野 勝男)

 発売までに200人以上の農家に実際に操縦してもらい、改良を重ねた直進維持機能付き田植え機は大ヒット。初心者でもぬかるんだ水田を真っすぐに進めるとして、家業を継ぐにあたってこの田植え機の購入を条件にする後継者もいるほどだ。

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