温暖化ガス削減関連の投資資金「グリーンマネー」は世界で4000兆円を超える。投資家は企業に気候変動対応を強く求め、おろそかな企業から投資を引き揚げる。世界を覆う大潮流。資金の流れが企業に待ったなしの変革を迫る。

<span class="fontBold">COP26では岸田文雄首相も演説したが、総じて目立ったのは金融機関だった。金融機関の有志連合は脱炭素に今後30年で100兆ドルを投じると表明した</span>(写真=代表撮影/ロイター/アフロ)
COP26では岸田文雄首相も演説したが、総じて目立ったのは金融機関だった。金融機関の有志連合は脱炭素に今後30年で100兆ドルを投じると表明した(写真=代表撮影/ロイター/アフロ)

 「世界の気温上昇を1.5度以下に抑制できるような組み合わせで投資信託を購入したい」。近くこんな資産運用ができるようになる。運用資産約1000兆円の世界最大級の資産運用会社、米ブラックロックは12月からの開始を目指し、金融商品の気候変動への影響を温度で示す世界でも類を見ない試みに挑む。この取り組みが進めば、投資家は自らが購入するETF(上場投資信託)や、株式、債券の公募投資信託が気候変動にどんな影響を与えそうか、温度指標を見ると一目で分かる。世界的な気候科学者を雇うなどして、金融工学のデータ分析力に気候科学を融合させ独自の計測ツールを開発している。

「1.5~2度目標」との差が歴然

<span class="fontBold">米ブラックロックは年内にも金融商品の気候変動への影響を「気温変化」で表示する</span>(写真=AP/アフロ)
米ブラックロックは年内にも金融商品の気候変動への影響を「気温変化」で表示する(写真=AP/アフロ)

 温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」では、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度より十分低く保ち、1.5度に抑える努力をする」という長期目標を定めた。この達成に向けて、2050年には温暖化ガス排出量を実質ゼロに引き下げなければならない。

 同社が使う計測ツールでは、排出量の上限に対して各産業や企業に残された「排出余地」と実際に排出するであろう予測値を比較する。その排出量の差を温度に換算する。例えば「世界株式に投資するこの投信は1.4度」「この指数連動型ETFは3度」などと表示するので、パリ協定の「1.5~2度目標」との差が一目瞭然。「気候変動を背景にサステナビリティーが当社の投資の基軸になっている」。ブラックロック・ジャパンの内藤豊サステナビリティ戦略部門長は説明する。

 一方、ブラックロックは企業に脱炭素実現への変革を強く求める。ラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)が投資先の企業トップ宛てに送る「フィンクレター」では、脱炭素シフトに乗り遅れるな、と警鐘を鳴らした。「ネットゼロ経済への移行準備が迅速にできない企業の事業は芳しくなく、企業価値も低迷するだろう。劇的な変化へのビジネスモデルの適応力について、ステークホルダーの信頼を失ってしまうためだ」

<span class="fontBold">「脱炭素対応が遅い企業は信頼を失う」(ブラックロックのラリー・フィンクCEO)</span>
「脱炭素対応が遅い企業は信頼を失う」(ブラックロックのラリー・フィンクCEO)

 脱炭素へ投資を促進するのはブラックロックだけではない。世界持続的投資連合(GSIA)によれば、20年のESG(環境・社会・企業統治)投資総額は全体で35兆3000億ドル(約4010兆円)と前回調査の18年から15%増加した。調査対象の機関投資家の運用資産98兆4000億ドルの約4割に相当する。金融市場に押し寄せるグリーンマネーの奔流は企業に脱炭素への戦略を示せと迫る。欧米や日本など各国金融当局は気候変動への影響についての開示を企業に義務付けようとしている。

約4000兆円のESGマネーが世界で動く
●世界の機関投資家によるESG投資の残高
<span class="fontSizeL">約4000兆円のESGマネーが世界で動く</span><br />●世界の機関投資家によるESG投資の残高
出所:世界持続的投資連合(GSIA)による報告書(2020年版)
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気候変動に関する開示が充実へ
●上場企業に対する気候変動影響の開示要求の動き
<span class="fontSizeL">気候変動に関する開示が充実へ</span><br />●上場企業に対する気候変動影響の開示要求の動き