超小型人工衛星の事業に進出し、民間発射場での打ち上げサービスの開始も目前。いわゆる「製造子会社」だったキヤノン電子は、独自色が強い高収益企業に変貌した。その背後にあったのは、徹底したムダ取りと人材育成を進めた20年越しの改革だ。

<span class="fontBold">キヤノン電子が手掛ける超小型人工衛星と宇宙事業の関連部品</span>(写真=尾関 祐治)
キヤノン電子が手掛ける超小型人工衛星と宇宙事業の関連部品(写真=尾関 祐治)

 「本州最南端の町」として知られる和歌山県串本町。町の東部の海沿いで、日本初となる民間ロケット発射場の建設が進む。早い段階での初号機打ち上げを目指して工事を進めるのはロケット会社のスペースワン(東京・港)。キヤノンの上場子会社であるキヤノン電子が主導して2017年に設立し、21年2月時点で59.5%を出資する企業だ。「KAIROS(カイロス)」と名付けた小型ロケットを打ち上げ、小型衛星を宇宙空間に運ぶサービスを提供する計画だ。

 キヤノン電子は重さ数十kgの超小型人工衛星も手掛ける。17年に1号機を地球周回軌道に乗せることに成功。その後も打ち上げに成功し、現在は2機体制で運用のノウハウを蓄えているところだ。

<span class="fontBold">キヤノン電子の人工衛星で撮影した画像</span>
キヤノン電子の人工衛星で撮影した画像

 「人工衛星がついに商業化のステージに入ってきた。宇宙事業を主力ビジネスに育てる」。こう話すのはキヤノン電子の酒巻久会長。自らが主導した20年以上にわたる経営改革から生まれた宇宙事業が収穫期に入ろうとしていることに目を細める。

 キヤノン電子は精密機器や電子機器、光学機器の開発・生産を手掛ける。20年12月期で見ればキヤノン向けの売上高が50.1%で、外部顧客向けが半分近くを占めるなど独自色が強い製造子会社だ。売上高に対する経常利益率が10%前後で推移する高収益企業として知られる。

「子会社気質」がまん延

 だが、キヤノンで技術畑を歩んだ酒巻氏が1999年に社長に就任した時のキヤノン電子の姿はまったく違っていた。「正直言えば、左遷されたと感じた」(酒巻氏)。当時は、キヤノンの部品や製品を製造するだけ。抱えていた累積負債や不良在庫、過剰な設備投資などは合わせて300億円ほどあった。それでも社内の危機感は乏しく、典型的な「子会社気質」がまん延しているように見えた。

 酒巻氏には、キヤノンで果たせなかった「いつかは宇宙事業をやりたい」という夢があった。精密機器や光学機器の製造技術を持つキヤノン電子であれば実現できるかもしれないと期待しての社長就任だった。だが、社内を知るほどに資金繰りの厳しさと新事業に挑める人材の不足を痛感。まずは経営基盤を立て直さなければならなかった。1年目は社内をじっくり観察して人材や技術を把握することに努め、2年目から2つの経営改革に本格的に乗り出した。

続きを読む 2/4 ムダ取りなら自社だけでできる

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