この記事は日経ビジネス電子版に『米社買収 「これで成長できなければパナソニックはもう駄目だ」』(9月30日)、『大型M&Aのトラウマ払拭へ パナが挑む、脱「上から目線」』(10月1日)、『71億ドル買収率いたパナ樋口専務「ハードだけでは生き残れない」』(10月18日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』10月25日号に掲載するものです。

パナソニックは9月17日、米ソフトウエア会社のブルーヨンダーを71億ドル(約7700億円)で買収した。3年超続いた買収を巡る議論は今年3月、社長退任間近の津賀一宏による「一押し」で終幕を迎えた。社長在任の9年で成し遂げられなかったことへの悔恨と次代への思いがあった。(敬称略、肩書は当時)

<span class="fontBold">パナソニック会長の津賀一宏(左)、社長の楠見雄規(中)、専務執行役員の樋口泰行</span>(写真=津賀氏:今 紀之、楠見氏:EPA=時事、樋口氏:北山 宏一)
パナソニック会長の津賀一宏(左)、社長の楠見雄規(中)、専務執行役員の樋口泰行(写真=津賀氏:今 紀之、楠見氏:EPA=時事、樋口氏:北山 宏一)

 9月上旬、神戸市にあるパナソニックのパソコン「レッツノート」の工場。担当者が制御端末に表示されたボタンをクリックすると、部品ごとの在庫数がズラリと表示された。画面には、神戸工場だけでなく台湾工場のデータもある。このシステムを使えば、ボタン1つで世界中の在庫を把握できる。

 導入したのは、パナソニックが9月17日に買収を完了した米ソフトウエア会社、ブルーヨンダーのシステムだ。同社はサプライチェーン管理に強く、米コカ・コーラや英ユニリーバなど世界に3000社以上の優良顧客を持つ。神戸工場は2020年12月にこのシステムを導入した。

 効果は予想以上だ。エクセルシートを送って情報交換していた各工場の在庫を、クラウド経由で一元管理できるようになった。サプライチェーンを手掛ける社内カンパニー、コネクティッドソリューションズ(CNS)社副社長の坂元寛明は「属人的だった在庫管理が『見える化』され効率化された」と強調する。

 約半年前の今年3月。大阪府門真市にあるパナソニック本社の役員室。社長の津賀一宏を筆頭に、カンパニー長ら約10人の役員がグループ戦略会議、通称「G戦」でブルーヨンダーの買収の是非を議論していた。

 「いくら何でも高すぎます」

 「買収してうまくいきますかね」

 ブルーヨンダーの買収は、幾度となくG戦で議論されてきた。この日も複数の役員から反対が相次いだ。新型コロナ禍を受けてサプライチェーン管理を見直す企業が増え、20年5月に55億ドルと見積もられていた同社の企業価値は85億ドルまで上昇していた。年度末が迫り、決断できずに買収話は流れるかと思われた。

 ところがその後、会議の流れが一変した。聞き役に徹していた津賀の言葉が部屋に響きわたった。

続きを読む 2/6 「反対するなら、代案を」

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