この記事は日経ビジネス電子版に『トヨタ社長の報酬はマスク氏の2670分の1、質素は美徳なのか』(5月13日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』9月13日号に掲載するものです。

大富豪を夢見る優秀な若者が、日本を含めて世界中から米国に集結している。こうした移民たちの絶え間ない流入が、米産業界のイノベーションを支える。日本も戦前は桁違いの大富豪がたくさんいた。功労者への報い方を問う。

 米国の電気自動車(EV)メーカー、テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)が先ごろ約1兆2000億円の成果報酬を手にする権利を獲得した。2021年1~3月期決算が好調だったためだ。もはや庶民ならずとも、使い道を想像できない金額である。

 日本最大の企業、トヨタ自動車の豊田章男社長が受け取っている報酬であっても、マスク氏に比べれば何ともつつましい。21年3月期の報酬は4億4200万円と、マスク氏が今回権利を獲得した金額の2700分の1である。

 豊田氏はこれから2700年先の西暦4721年ごろまで働き続けなければ、マスク氏と同額の報酬を稼ぎ出せない。

 米国には経営者に莫大な報酬を与えている企業がテスラ以外にもたくさん存在する。米国企業の昨年の役員報酬ランキングを見ると、約7300億円を稼ぎ出した首位のマスク氏に続き、数百億円の報酬を得た経営者がずらりと並ぶ(米ブルームバーグ調べ)。

(写真=上:ロイター/アフロ、下:Geisler-Fotopress/DPA/共同通信イメージズ)
(写真=上:ロイター/アフロ、下:Geisler-Fotopress/DPA/共同通信イメージズ)
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 卓越した個人にめまいがするほどの報酬を与えて、イノベーションを促すのが米国の流儀だ。一方で副作用として著しい経済格差が社会をむしばむ。

 日本はこのままずるずると「失われた40年」を迎えないために、今後どのような社会モデルを目指すべきか。善しあし両面を持つ米国社会をベンチマークとしつつ、日本に適した社会モデルを検討していく。それは「日本人らしさ」を探求する作業でもある。

 経済学者の森口千晶・一橋大学教授は「トヨタ生産方式に、日本らしさが表れている」と主張する。カイゼン活動に代表される、生産現場が一丸となったチームワークにより、トヨタは極めて高い品質と業務効率を達成し、世界的な自動車メーカーに成長した。

続きを読む 2/4 カイゼンでは大変革起こせぬ

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