この記事は日経ビジネス電子版に『財務のプロ・石野氏「損益ではなくバランスシートで考えよう」』(7月16日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』8月30日号に掲載するものです。

財務諸表が読めるかどうかで、若手ビジネスパーソンの成長速度は大きく変わる。銀行や自動車メーカーで経験を積んだ財務の専門家が重視するのは「現金」と「資産」。バランスシートこそが会社の方向性を示すと説く。(6月22日開催の日経ビジネスLIVEを再構成した)

オントラック代表石野 雄一
1991年上智大学理工学部を卒業し、旧三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。米国留学を経て、日産自動車に入社。財務部にてキャッシュマネジメント、リスクマネジメント業務を担当する。2009年にコンサルティング会社であるオントラックを設立。『実況! ビジネス力養成講義 ファイナンス』(日本経済新聞出版)など多くの著書がある。

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 まずお伝えしたいのは「会計人」と「財務人」の違いです。私の造語ですが、会計人とは経理部で働いている方々、財務人とは財務部で働いている方々を指します(下の図1)。

財務人は未来を予測する(図1)
●「会計人」と「財務人」の感性や視点の違い
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 ヒトという切り口では、会計人はきっちりされている方が多くて、私のような財務人はざっくり人間ですね。

 モノという観点では、会計人はいろいろなルールに囲まれています。例えば決算基準。日本の上場企業約3800社のうち200社強が国際会計基準(IFRS)を採用していますが、その他多くは日本基準を使っています。米国に本社を置く法人は米国基準が主流ですね。それに対し、財務人の世界には1つのルールしかありません。

 カネという切り口で見ると、会計人が扱うのは利益、財務人が扱うのは現金です。よく「利益は意見である」と言われますが、誰の意見だと思いますか。正解は経営者です。

「利益」はうそをつく

 例えば、皆さんが1年間で10億円の利益を稼いだとします。社長が「そのお金、使いたいから持ってきて」と言っても、皆さんが持っていけるとは限りません。なぜならば、利益とは頭の中にある抽象概念だからです。

 対して「キャッシュ(現金)は事実である」と言われます。皆さんが1年間で現金10億円を稼いだとして、社長から「使いたいから持ってきて」と言われたら、持っていけますよね。現金は利益と違って実体があるからです。

 だからこそ、昔から「現金はうそをつかない」と言われてきました。じゃあ、利益はうそをつくのでしょうか。ええ、うそをついてしまった会社がありましたね。最近も話題になっている東芝です。東芝は、7年間に2000億円以上もの利益を水増ししていました。利益は概念ですから、つくり出すことができるんです。経営者の意見によって変えることもできる。

続きを読む 2/4 「現金」を最優先に見る

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