若手時代、どう仕事に向き合うか──。日経ビジネスは20~30代向けにセミナーを開催した。講師は、リチウムイオン電池の開発でノーベル化学賞を受賞した旭化成の吉野彰氏。世紀の発明に取り組んだきっかけとは。(7月1日開催の日経ビジネスLIVEを再構成した) 

旭化成名誉フェロー 吉野 彰
1948年生まれ、大阪府吹田市出身。72年京都大学大学院工学研究科石油化学専攻修士課程修了、旭化成工業(現・旭化成)入社。2017年から現職。リチウムイオン電池の開発で、19年ノーベル化学賞受賞。名城大学特別栄誉教授、産業技術総合研究所ゼロエミッション国際共同研究センター長などを兼ねる。

2019年にリチウムイオン電池の開発でノーベル化学賞を受賞された吉野さんですが、ビジネスパーソンにとって若手時代、35歳くらいまではどういう時期だと思いますか。

<span class="fontBold">吉野氏が33歳で始めたリチウムイオン電池の研究はノーベル化学賞の受賞につながった</span>(写真=共同通信)
吉野氏が33歳で始めたリチウムイオン電池の研究はノーベル化学賞の受賞につながった(写真=共同通信)

 35歳前後というのは、入社して10年ほど経験を積み、世の中や会社の仕組みが分かってくる時期です。自分で考えて動く権限も与えられるようになります。一方、仮に何か新しいことを一発やって失敗したとしても、まだチャンスがあります。この3つの条件がそろい、思い切ったことにチャレンジできる時期だと思います。

 私がリチウムイオン電池の探索研究に着手したのも33歳の時です。37歳で現在のリチウムイオン電池の原型に至りました。リチウムイオン電池は、自分の好奇心に基づいて「0」から「1」を生み出す探索研究で、私が手掛けた4番目のものです。その前の3つは失敗しています。

若手時代を振り返り、吉野さんの血肉になったものは何でしょうか。

 一つはそういう探索研究でチャレンジをしてきたことです。もう一つは一気通貫で研究に取り組み、知恵を蓄えたこと。研究には様々な段階があり、探索研究で基礎技術が出来上がったら、次は問題や課題を解決し、世の中に出せるところまで仕上げる開発研究を行います。その後、製品のマーケットを立ち上げるための研究を行います。

 これらの研究を分業するアプローチもありますが、私は最後までやり遂げました。どちらがいいということではありませんが、私の場合は一気通貫で研究に取り組む中で様々な経験を積んだことが血肉になったと思います。

組織に勤めていると、自分がやることを会社や上司から否定されることがあります。「世界を変える」という思いで研究している技術も、上司から「マネタイズできるのか」と見られてしまうかもしれない。どう折り合いをつければいいか悩む人も多いと思います。

 その研究の「筋がいいか否か」は研究者自身が一番分かっています。「継続か中止か」という議論になった時、研究者が弱気なとらえ方をしているならばやめた方がいいですね。「今は証明できないけれど、間違いなく筋がいい」と信念を抱いているのなら、否定されても徹底抗戦すべきです。

 筋がいいことを実証する時間をもらうのです。例えば「2年後に技術や市場についてこれとこれを実証します」とマイルストーンを示す。そうすればお互いに納得できますよね。

続きを読む 2/3 反対されない研究はもう遅い

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