企業や商品のブランド1500を消費者が評価する「ブランド・ジャパン」。コロナ禍による生活様式の変化は、ブランドにも大きな影響を及ぼしている。逆境で評価を高めた企業と下げた企業では、どこに差があったのか──。

(写真=陶山 勉)
(写真=陶山 勉)
[画像のクリックで拡大表示]

 「鳥の撮影でも『リアルタイム瞳AF』が効くんですね。30枚/秒の連写なら、飛び立つ瞬間を逃さずにベストショットが撮れそうだ」

 「リアルタイム瞳AF」とは、動いている被写体の瞳を瞬時に認識してカメラのピントを合わせる機能。人や犬、猫だけでなく鳥にも対応したと知って喜ぶ来店客に、店員が説明を付け加える。

 「30枚/秒は電子シャッターとしての最高連写速度です。それでも、画像のゆがみは少ないですよ」

 3月初めに取材で訪れたソニーストア 銀座には、3月19日発売のフルサイズミラーレス一眼カメラ「α1」を先行体験できるとあって、熱心なファンが羨望のまなざしとマニアックな質問を携えて来店していた。

 注目を集めている製品は、カメラの「αシリーズ」だけではない。2020年11月12日に発売した新型ゲーム機「プレイステーション 5」は、発売から4カ月以上たった今も入手困難な状況が続く。

 ソニーが輝きを取り戻している。ブランド価値調査「ブランド・ジャパン2021」の一般生活者編で、前回の41位から5位へと大きく躍進した。トップ10入りは、実に7年ぶりとなった。過去を振り返ると、ソニーは「ブランド・ジャパン2002」から9年にわたってトップ10の一角を占める“常連”だった。しかし、その後はトップ10圏外に順位を落とす年が目立った。

 一般生活者編は「フレンドリー(親しみ)」「コンビニエント(役立つ)」「アウトスタンディング(個性や魅力)」「イノベーティブ(革新性や注目度)」の4因子を合計した総合力で評価する。ソニーは「イノベーティブ」で前回148位から今回29位、「アウトスタンディング」で前回27位から今回8位と大幅に順位がアップしており、かつての「これまで世の中になかったもの」を世に送り出す会社というブランドイメージを再び持たれているといえそうだ。

 ただし、商品の魅力だけがブランドイメージ回復の原動力ではない点が以前と異なる。

存在意義を通じてまとめあげる

 ソニーの吉田憲一郎会長兼社長CEO(最高経営責任者)は、19年にパーパス(存在意義)として、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」と掲げた。このパーパスを実現する経営の方向性を「人に近づく」と表現している。

 「ソニーはグループとして多様な事業に取り組んでおり、消費者からは商品やサービスがバラバラに見えていたかもしれない。そこでグループ全体の共通認識として、パーパスを徹底してきた。その意識がようやく世の中に認められたのだと思う」。ソニーの森繁樹ブランド戦略部統括部長は、こう自己分析する。