新株予約権を活用した資金調達に踏み切る企業が増えている。 コロナ禍で窮地に追い込まれた企業が、最後の頼みの綱としてすがるケースも多い。だがそのスキームは複雑。一歩間違えると「捕らぬ狸の皮算用」に終わりかねない。

<span class="fontBold">コロナ禍が直撃した外食や航空業界などで新株予約権による資金調達を行う企業が増えている</span>(写真=右下:日刊工業新聞/共同通信イメージズ)
コロナ禍が直撃した外食や航空業界などで新株予約権による資金調達を行う企業が増えている(写真=右下:日刊工業新聞/共同通信イメージズ)

 3月2日午前。北九州市の市立商工貿易会館で、北九州空港に本社を置く航空会社スターフライヤーの臨時株主総会が開かれた。目的は優先株と新株予約権の発行を認めてもらうことだ。

 新型コロナウイルスの影響で航空会社は大幅な減便を迫られ、業績の急激な悪化に苦しんでいる。スターフライヤーもそのうちの一社だ。

 新型コロナの感染拡大が始まった直後の2020年3月期末に67億円あった純資産は、20年4~12月期に75億円もの最終赤字を計上したことで9カ月後の12月末にはわずか9400万円になった。自己資本比率は同じく22.9%から0.4%に急低下。年明けからは緊急事態宣言の再発令で人々の移動は再び減っており、21年3月末で債務超過に陥るのはもはや誰が見ても明らかだった。

 こうした事態を想定しスターフライヤーの経営陣は昨夏から動いていた。20年12月末の現金及び預金は106億円と、幸いにも資金繰りには困っていない。問題は貸借対照表(バランスシート、BS)だった。「債務超過になると信用力に関わる」(柴田隆取締役)。BSを強化するには、負債になる借り入れなどでは意味がない。経営陣の狙いは増資だった。

 だが株取引の流動性が乏しいうえ、業績の急降下局面とあって、1株利益の希薄化につながる公募増資は現実的ではない。残る手段は第三者割当増資くらいしかなかった。100億円規模の増資を受けてくれる第三者はどこかにいないか。証券会社などのツテも活用してたどり着いたのが、投資ファンドのアドバンテッジアドバイザーズ(東京・港)だった。

 アドバンテッジの要請もあり、筆頭株主のANAホールディングスに加えてTOTOや安川電機といった地元企業にも増資を引き受けてもらい、最終的にスターフライヤーは「最大で」110億円の資金調達にめどをつけた。

 110億円の内訳を見ると、アドバンテッジが55億円、ANAHDや地元企業が25億円で計80億円の優先株を引き受けた。そして残りの30億円がアドバンテッジへの新株予約権だ。「最大で」110億円というのは、実はまだ新株予約権の30億円分は増資金額として確定していないからだ。

続きを読む 2/4 増資できるかは株価次第
日経ビジネス2021年3月15日号 50~54ページより目次

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