この記事は日経ビジネス電子版に『在宅勤務の落とし穴、「リモハラ」最前線』として1月27日から配信した連載記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』2月1日号に掲載するものです。

新型コロナウイルス禍ですっかり定着したリモートワーク。ここにきて課題となるのがリモート越しでのハラスメント、「リモハラ」だ。生産性とハラスメント対策を両立するために企業がすべきことは何か。

 東京都内でシステム会社に勤務する五十嵐早苗さん(仮名)は、新型コロナウイルスが感染拡大した昨年春以降、自宅でのリモートワークが続いている。通勤地獄からは解放されたが、悩みの種がある。社内のオンライン会議だ。

 「本棚にある赤い帯の本は何?」「今日の服装、カジュアルすぎない?」。オンライン会議での上司による何げない一言がストレスに感じる。話題を変えてその場を何とかしのいでいるが、プライベートにかかわる質問がやむ気配はない。今では社内のオンライン会議に出るのが憂鬱で仕方がない。

あなたは大丈夫?こんな発言していませんか
●ハラスメントになりうる言動のイメージ
(写真=RUNSTUDIO/Getty Images)

 もちろん対策は打っている。ビデオ会議の時にはバーチャル背景を使い室内を映らなくしたことで、部屋についての話題はシャットアウトできた。だが、髪形や服装はどうしても映ってしまう。「プライベートにかかわることに触れられたくない」と、現在では社内でのオンライン会議ではカメラ機能はほぼ「オフ」にしている。

「リモハラ」が急増

 五十嵐さんだけではない。日本では現在、「リモハラ」が社会問題になりつつある。「リモートハラスメント」の略だ。コロナ禍でリモートワークが急速に広がったことで、新たに市民権を得つつあるハラスメントである。

 リモハラとは、どういったハラスメントなのか。一言で言えば、リモートワーク時に起こるハラスメントを指す。「業務中に起きるという点では、パワハラ(パワーハラスメント)とセクハラ(セクシュアルハラスメント)のいずれかに当てはまる」とハラスメント対策専門家であるダイヤモンド・コンサルティングオフィス(東京・港)の倉本祐子代表は指摘。パワハラ、セクハラのリモート版、と考えれば分かりやすい。

 リモハラが注目され始めたのは、昨年4月の緊急事態宣言直後のタイミングからだ。ツイッターなどSNS(交流サイト)上で、リモートワーク中の上司からの会話などのコミュニケーションについてのハラスメントを訴える投稿が相次いだ。

 ダイヤモンド・コンサルティングが昨年5月に実施した調査では、リモートワーク時の上司とのコミュニケーションにストレスや不快感を覚えた社員は約8割にもなった。自由回答を見てみると「やたらとウェブ会議をやりたがる」「仕事をサボっていないかいちいちチェックしてくる」といった声が上がったという。

部下はリモートワークで上司にストレスを感じている
上司もリモートワーク下で部下との距離に悩む
出所:ダイヤモンド・コンサルティングオフィス(Q.1~Q.4は2020年5月、リモートワーク業務下にある会社員それぞれ約100人が対象。Q.5~Q.6は11月、リモートワークを実施し上司や部下がいる20代から60代の会社員1091人が対象)

 すべてが法的なハラスメントに該当するわけではないが、リモートワークに付随する一連の上司の過剰な干渉がリモハラだと感じさせているようだ。このアンケートでは社員の46%が「常に仕事をしているかの連絡や確認」を、40%が「オンラインでのプライベートに関する内容の質問」を経験しているという結果になった。

 もっとも、リモート業務にストレスを感じるのは部下だけではない。管理職を対象にしたアンケートでは、5割超の管理職がリモート下で部下とのコミュニケーションに悩んでいるという結果が出たという。部下との「距離感」(56%)や「指示出しタイミング」(49%)というリアルの場であれば問題にならないような悩みが並ぶ。

 あるIT大手で管理職を務める並木洋二さん(仮名)はこう悩みを打ち明ける。「会社からはリモートワークだからコミュニケーションを強化しろと言われるけど、ハラスメントになるのが怖くて指示を出しづらい」

 リモハラに悩む上司と部下。目下、日本では東京など都市部を中心に2度目の緊急事態宣言の真っただ中だけに、リモートワークの長期化は避けられない。企業にとってリモハラ対策は喫緊の課題と言える。

続きを読む 2/4 ストレス増加が一因

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