カジノやホテルを有し、地域振興の起爆剤と期待される日本版IR(統合型リゾート)。自治体は前のめりに計画を進めたが、コロナ禍で収益の目算も、日程も狂ってしまった。カジノが社会に及ぼす影響も読み切れない。実現に向けて多難な先行きとなる。

横浜市山下ふ頭でのIRのコンセプト提案に応募があった事業者のイメージパース。多くの海外事業者がカジノを含むIRの実現を目指している(画像:横浜市都市整備局)
(画像:横浜市都市整備局)
(画像:横浜市都市整備局)

 「横浜市のIR計画は『カジノありき』の出来レース」。こう憤るのは横浜市の建築家、山本理顕氏だ。

 横浜市はかねて山下ふ頭にカジノや国際会議場、展示施設、ホテル、ショッピングセンターなどを設置するIR(Integrated Resort、統合型リゾート)の誘致を進めてきた。だが、山本氏には市民との十分な議論がないまま市当局が拙速にことを進めようとしていると映る。

 市は2019年10月末にIRのコンセプト募集(RFC)を行った。提出期限である2カ月の間に、国内外のIR事業者7社が応募した。公共建築の設計を多く手掛けてきた山本氏は「市とカジノ事業者が前もって協議をしていなければ、わずか2カ月でRFCに対応できない。市民は置き去りだ」と指摘する。

争点化しないはずだった

 IRの誘致を表明しているのは「大阪府・大阪市」「横浜市」「和歌山県」「長崎県・佐世保市」の4カ所。カジノが核となるため、慎重な意見も出る。その中でも横浜の反対運動は象徴的だ。林文子市長は17年の市長選でIRに慎重な姿勢を示して3選。ところが19年に一転誘致を表明した。この不透明な経緯からかねて反対派が勢いを増していた。

 さらに事態をややこしくしたのが20年12月の政府の閣議決定だ。都道府県や政令市がIR区域整備計画の認定を申請する期間を従来の「21年1月4日~7月30日」から「21年10月1日~22年4月28日」へと9カ月延期した。インバウンド消滅や景気後退で従来の日程で進めるのは難しいと判断した。

コロナ禍の影響でIR申請期間が延期
●IR導入に関する国のスケジュール

 林市長の任期は21年8月29日まで。在任期間中の申請ができなくなり、申請を終えてから市長選を迎える日程は覆った。市長選ではカジノが争点となる見通しだ。有権者の賛否が改めて問われることになる。

 政府はカジノが経済成長のけん引役になると期待している。電機や車といった基幹産業が力を失う中で、伸びるインバウンドにさらにお金を落としてもらい、観光立国への道を盤石にしようと16年から18年にかけて関連法制を整備した。国際会議場やホテルと一体化した開発により、外国人観光客が増えることで地域に新たな雇用が生まれる。自治体にはカジノの収益の一部が税収となるメリットもある。

 一方、反対意見は根強い。ギャンブル依存症の社会的コストや若年層への教育の観点から慎重な意見がある。海外の事業者が多く、外資企業が収益を追求するための仕組みだと受け止める住民もいる。賛否の判断を求められる首長は、民意をくみ取りながら慎重に発言を重ねている。

 ただ、国のリゾート開発の経緯を振り返ると、政府が進めてきた計画に一貫性はある。

続きを読む 2/5 石原氏、小泉氏、そして……

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