宅配クライシス対応の切り札

 楽天は同社の物流センターを利用する出店企業向けに、37都道府県で、独自の配送サービスを実施している。配送地域の居住人口は、日本の人口の約63%をカバーしているが、今後は80%を目指す。運転手の確保が難しい中、配送効率が低い過疎地や、山間部や離島などトラックのアクセスが難しい地域にサービスを拡大するには、ドローンの活用が避けて通れない。

 買いたい商品を選ぶと、重量も自動で積算してくれる専用アプリも開発した。「ドローンの信頼性がさらに高まり、飛行に関する規制緩和が進めば、21~22年ごろに無期限のドローン配送サービスを立ち上げたい」と向井氏。

<span class="fontBold">ドローンの測量分野での利用で、日本は世界の先を行く。早稲田大学とテラドローンはレーザー測量ができる機体の価格を大幅に引き下げることに成功。測量会社など30社が導入した</span>
ドローンの測量分野での利用で、日本は世界の先を行く。早稲田大学とテラドローンはレーザー測量ができる機体の価格を大幅に引き下げることに成功。測量会社など30社が導入した
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 自在に飛行、停止ができるドローンは、様々な産業分野で省力化が期待できる。過疎化が進む地域への物流アクセスを改善するだけでなく、少子高齢化で担い手が減っている農業や熟練した技能が必要な高所での作業、省人化による生産性向上など、ドローンを有効活用することで、日本社会が抱えている様々な課題に対応できる。

 インプレス(東京・千代田)の調査によると、19年度の国内のドローンビジネス市場規模は、前年度比51%増の1409億円に達した。25年度には4.6倍の6427億円に拡大すると見込む。機体の生産に関するものは一部で、ドローンを活用したサービスや、保守や保険などの周辺サービスが多くを占める。「産業の裾野が広い、重要な成長市場だ」(みずほ情報総研の西村和真氏)

 伸びしろの大きい市場を目指し、様々なベンチャー企業がドローン事業に参入し、技術開発に取り組む。

<span class="fontBold">エアロセンスは10月、プロペラで垂直離着陸し、固定翼と機体後部のプロペラで水平飛行する新型ドローン「エアロボウイング」を発売。時速75kmで40分間、50kmという長距離を巡航できる</span>
エアロセンスは10月、プロペラで垂直離着陸し、固定翼と機体後部のプロペラで水平飛行する新型ドローン「エアロボウイング」を発売。時速75kmで40分間、50kmという長距離を巡航できる

 ソニー、自動運転技術やロボットを開発するZMP(東京・文京)、住友商事の3社が出資するエアロセンス(東京・文京)は10月、プロペラで垂直離着陸し、固定翼で水平飛行する新型ドローン「エアロボウイング」を発売した。

<span class="fontBold">エアロセンスの有線ドローン。高精細カメラを搭載し、4K動画を撮影できる。独自開発の長さ100mの超軽量ケーブルで電力と画像データを地上とやり取りする</span>
エアロセンスの有線ドローン。高精細カメラを搭載し、4K動画を撮影できる。独自開発の長さ100mの超軽量ケーブルで電力と画像データを地上とやり取りする

 時速75kmで40分間、50kmを巡航できる。運べる荷物は1kgまでと限られるが、「離島へ緊急性の高い医療物資を届けるといった用途で威力を発揮する」(佐部浩太郎・エアロセンス社長)。カメラを搭載し、1回の飛行で100ヘクタールの土地を測量したり、国内で総延長14万kmに達する送電線の点検などに使うことも可能だ。

 同社はドローンの弱点とされるバッテリーの駆動時間を気にせず使える、有線ドローンも商品化。スポーツや音楽のイベント撮影に使われているほか、警備などの用途も見込む。

<span class="fontBold">ナイルワークスのドローンは、全自動で農薬や肥料を散布する。12種類のセンサーで高度な位置制御を行い、水平方向に±2cm、高度は±5cmという安定した精密飛行を可能にした</span>
ナイルワークスのドローンは、全自動で農薬や肥料を散布する。12種類のセンサーで高度な位置制御を行い、水平方向に±2cm、高度は±5cmという安定した精密飛行を可能にした

 一方、住友化学や住友商事などが出資するナイルワークス(東京・渋谷)は、農業用ドローンの開発を進める。水田への農薬や肥料の散布が全自動でできるほか、稲の状態をカメラで撮影し、画像解析によって生育状況を診断するサービスも準備している。

 ただし、ドローンの運用には、交換用の多数のバッテリーを保有し、管理する必要がある。ナイルワークスは、それらを産地でシェアリングする試みを宮城県と北海道で進めている。導入の負担を下げることで普及を後押しする。

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