全5088文字

ドローン(小型無人機)の産業利用が物流など様々な分野に広がってきた。過疎化、少子高齢化、生産性向上など、日本社会の課題解決への期待がかかる。モノ作りなど日本の強みを生かし、世界市場を狙う動きも進む。

楽天は9月半ばまでの1カ月間、北アルプスの白馬岳で物流実験を実施。風況の変化も激しい環境で5kgの荷物を麓から安定輸送できた

 夏場には多くの登山愛好家が訪れる北アルプスの名山、白馬(しろうま)岳(長野県白馬村、標高2932m)。ここで9月半ばまでの約1カ月間、ドローンを使った日本初の実証実験が実施された。楽天などが実施した、アクセス困難地域へのドローンを使った物流実験だ。

 使用したのは、楽天がドローンメーカーと開発した物流専用の機体。幅160cmと大型で、最大で5kgの荷物を積める。最長で16km、40分の飛行が可能だ。麓の登山口で荷物を積んだドローンは、約1600m上の山頂付近の山荘まで全自動で飛行する。着陸後、荷物を入れた箱を切り離し、麓へ帰還する。この一連の動作も自動で行う。徒歩で登れば約7時間かかる道のりに要する飛行時間は約15分。物資輸送を格段に効率化できる。風況がめまぐるしく変わる山岳地帯で、これだけの標高差で物資輸送をした実証実験は日本では過去に例がない。

 山荘では、食料や生活物資をヘリコプターや人力によって麓から運んでいる。だが、高い技能や体力を要する荷上げの担い手は減少しており、費用も高騰している。さらに安全面から、視界不良など気象条件によって輸送が滞ることもしばしばある。ドローン1機に積める荷物の量は限られるが、「複数機でピストン輸送しても経済的なメリットを出せる。登山客の荷物を運ぶといったBtoCのニーズも開拓したい」と、楽天ドローン・UGV事業部の向井秀明ジェネラルマネージャーは話す。

 楽天がドローン事業を立ち上げたのは2016年のこと。ネットショッピングが急速に普及し、10年に約7.8兆円だった国内の市場規模は、19年に約19兆円へと2倍以上に拡大した。

 その副作用が、商品を配送するトラックの運転手不足だ。17年に83万人いた運転手は、高齢化や若い担い手の不足などにより27年には72万人に減少するとの予測がある。一方、EC(電子商取引)のさらなる拡大により、同年には96万人の運転手が必要になるという。この大幅な需給ギャップを埋めるために、ドローンなどを活用して大胆な効率化を図らなければならないと、三木谷浩史会長兼社長は判断した。

日経ビジネス2020年12月7日号 46~50ページより目次