猛威を振るう新型コロナウイルスの感染拡大は幅広い産業に打撃を与えている。 だが、丸井グループ、アイリスオーヤマのように独自の哲学で逆風に立ち向かう企業も。 両社は危機に何を考えたのか。(7月2日、8月18日開催の日経ビジネスLIVEを再構成)

丸井グループ 青井浩社長
テナント賃料を免除した真意

丸井グループ
青井 浩社長
1986年丸井(現・丸井グループ)入社、2005年4月から現職。創業以来の小売り・金融一体の独自のビジネスモデルをベースに、様々な改革を進める。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、企業の価値があらためて問われています。丸井グループは、いわゆる百貨店型のビジネスからショッピングモール型のビジネスへの移行を図ってきたほか、証券業への進出やモノを売らない店を念頭に置いた展開など改革を強化してきました。一方で「共創経営」というコンセプトで独自の経営を進めています。

青井浩・丸井グループ社長(以下、青井氏):私どもの経営の中核となる考え方は「共創=共に創る」です。これは、創業者の「信用は私たちがお客様に与えるものではなく、お客様と共に創るもの」という言葉に由来しています。

 近年はその考え方を全てのステークホルダーに広げました。「お客様」「株主・投資家様」「お取引先様」「地域・社会」「社員」「将来世代」です。2018年から「将来世代」が加わりました。

 一般にステークホルダー間の利害は対立しがちだといわれています。例えば、株主・投資家と社員の間には、利益の配分を巡るせめぎ合いがあります。業績が振るわないのに社員に高い給料を払い続けていると、株主からは文句が出ます。あるいは、赤字の事業があると、リストラして人員の削減を求めたりということもあります。

 こうした利益の不一致は、特に短期的な視点で見たときに目立つようですが、よく見ると利益が一致する部分があります。例えば、社員への教育投資などは費用として計上されますので、株主の利益の取り分を減らしますが、長い目で見ますと企業の競争力が高まることで、株主の利益にもつながります。

 短期の視点ではなく、できるだけ長期の視点から捉え、また、利益の対立よりも利益の調和をステークホルダーとの対話を通じて見つけ出そうとしています。これが、私たちの考える「共創経営」です。

「家賃をもらっていいのか」

「共創」の長期のストーリーは、コロナ禍の中で、大きな意味を持つようになっていると思います。具体的にどのような形となって表れたのでしょうか。

青井氏:コロナ危機で4月に緊急事態宣言が出て、2カ月間全店舗営業ができませんでした。戦争の期間を除けば、信じられないような厳しい状況でした。私どもだけでなく、主にお取引先様、テナント様も大変な苦境に陥りました。

 丸井グループは現在、(テナントから)粗利の一定割合を受け取る方式ではなく、家賃を頂く不動産型のビジネスモデルに転換していますので、営業していてもしていなくても契約上は家賃を頂戴できる立て付けになっています。ですが「お取引先様も大変なときに、家賃をもらっていいのか」と本当に悩みました。

 その時、原点に返って「共創経営」という視点で考えてみると、「テナントさんに収入がないなら、私どもも収入はない、ということが最もフェアではないか」という結論に至り、2カ月分の全額免除を決定しました。これは、株主から見れば丸井グループが債権放棄することになりますが、しっかり説明して承認を頂きました。

 私が一番うれしかったことは、お取引先様からすごく喜んでいただけたのはもちろんですが、社員が「うちの会社は『共創経営』と言っているけれど、口で言っているだけではなくて本気でやっているんだ」ということを感じてくれたことです。

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