「コロナ禍では『How』や『Where』の議論に終始してしまった」。こう話すのは『大学改革の迷走』(ちくま新書)などの著書がある同志社大学商学部の佐藤郁哉教授だ。対面か遠隔かなどといった話は「表面的だ」とした上で、「どういった内容を、どんな人材が教えるのか、という大学のあり方を問う本質的な課題を方法論で隠してしまっている」と指摘する。コロナ禍は大学の教育のあり方そのものを見直す機会にもしなければならない。

 コロナ禍の収束が見通せない中、進学を目指す高校生の期待も変わっていくだろう。大学の知名度やキャンパスライフよりも、どれだけ豊かな知識や経験を得られるかという本質的な部分に重きを置く傾向が強まりそうだ。大学が自らの存在意義を明確に示すことで、高校3年生の悩みは少しずつ晴れていく。

広がるオンライン入試 地域格差の解消にも

懸念される不正受験を防ぐ技術も
●EduLabが提供する監視システムの仕組み
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 「入試は予定通り実施できるのだろうか」。有名私大のある教授は心配そうに話す。

 11月に入り、新型コロナウイルスの新規感染者数が再び増加傾向になった。大阪府立大学では9~10日にかけて学生の感染が確認され、一時的に学生の一部キャンパスへの立ち入りを禁止とした。再び学生生活への影響が出始めた。

 文部科学省は入試の実施に関するガイドラインを公表しており、必要な感染対策を講じていれば通常通りの形で入試を実施してよいとした。また感染者には再試験などの対応を取る大学がほとんどだ。ただ再び感染拡大が深刻になり、政府が緊急事態宣言を再発令するといった事態になると入試の開催も危ぶまれる。冒頭の私大教授は「学生の受験機会を確保するのが最重要」とした上で「私大は受験料収入がなくなると経営が厳しくなる」とも指摘する。

 そんな中で注目を集めるのがオンライン入試だ。大正大学は11月28日に実施する学校推薦型選抜でオンライン受験を選択できるようにした。まず、ビデオ会議システム「Zoom」で授業を受け、その内容を基にしたリポートを提出する。面接はZoomを通して実施する。筆記試験はパソコン上で受ける形を取る。

 試験での不正防止に活用するのがEduLabが開発したオンライン試験監督システムだ。試験中はカメラで受験者の様子を撮影する。目線が一定時間画面から外れるなど「怪しい行動をAI(人工知能)が検知する」(EduLabの松本健成執行役員)。本人確認もAIが担う。最終的には担当者が映像を確認して不正かどうかを判断する。またパソコン上で試験画面以外を開けないようにするなど不正を未然に防ぐ仕組みも取り入れる。

 旺文社と組んで大学向けにシステムを提供すると7月に発表。10月までに約50の大学から問い合わせがあり、10大学ほどへの導入が決まった。「来年度以降の導入を検討している大学も多い」(松本氏)。コロナ対応だけでなく、地域による受験機会の公平性などの観点からオンライン試験の導入を検討する大学もあるという。

 一方で「オンライン試験の実施には通常通りの開催以上にコストがかかる。とてもこれまでの受験料では採算が合わない」(予備校関係者)との声もある。大学は基本的にキャンパス内で試験を実施してきたため、会場費はほぼかからなかった。一方オンラインでは試験・監督システムの構築に大きな費用がかかる。オンラインが主流になるまでにはもう少し時間がかかりそうだ。

日経ビジネス2020年11月23日号 56~60ページより目次

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