大学は受験生集めに苦慮
悩みが深まる高校生を呼び込む大学側も対応に苦慮している。
「オープンキャンパスはうちの看板行事。今年は学内の雰囲気を直接味わってもらえず、そこはマイナスだ」。こう話すのは近畿大学広報室の加藤公代室長。近大はここ数年、全国の大学志願者数ランキングでトップを走っている。20年一般入試の志願者は14万人以上に上った。


「近大マグロ」などを活用した広報活動の巧みさが注目されるが、オープンキャンパスの人気も高い。例年は各学部の学生ボランティアが付きっきりで学内を受験生に紹介して回る「キャンパスツアー」が目玉コンテンツ。夏休みに実施すると1日1万人強が訪れるという。
ただ、今年は近大生すらキャンパスに通えない日々が続いた。当然、受験生も学内を見学できない。そこで近大は「クローズキャンパス」と題してオンライン上で学内の紹介などを実施した。同じつづりの「クロース(近い)」の意味も込め、受験生に寄り添う情報発信を目指した。「思ったよりも受験生が見てくれた」(加藤室長)と安堵するが、それでもライブ配信の視聴者は常時200~300人ほど。延べ人数はもっと多いとはいえ、例年のにぎわいを再現するまでには至らなかった。
受験生が得られる情報量が少ない今回の入試戦線。関係者からは「有名大に人気が集中するのでは」(有名私大関係者)、「国公立なら旧帝大、私立なら早慶以上の上位大は例年と出願状況が変わらない」(予備校関係者)、「中堅クラスの大学がもっとも割を食うのでは」(高校教員)といった声が上がる。高校生にも大学にも初めての事態であり、最終的にどんな影響が出るかは最後まで見通せなさそうだ。
大学がもう一つ頭を悩ませているのが、学生への授業スタイルをどうしていくかだ。「後期の対面授業が5割未満の大学名を公表する」。10月に方針を掲げたのは萩生田文科相。「入学したのに1度も学校に行けない。休校や退学を考えている学生さんもいる」として、暗に対面授業の拡大を大学側に求めた。
文科省の調査によると後期を対面授業だけにする大学は約2割。全て、あるいはほとんどがオンライン授業という大学も2割弱だ。感染拡大を防ぎながら対面とオンラインとの最適な組み合わせを模索する状況が続く。
「反転授業」のきっかけに
「実習の時間は例年の5分の1になってしまったが、工夫でかなり補完できた」。山梨大学生命環境学部の大山拓次准教授は自らが担当した、生命工学科3年生向けの前期の実習授業をこう振り返る。5月までは実験に使う機器やその操作法などを撮影し、学生向けに配信。6月以降は実習室に入れる人数を絞って時間も減らしながら進めた。結果、例年の6割程度は実習を完了できたという。

大山氏は「撮影した映像をアーカイブにしていけば、予習復習にぴったりだと感じた」と話す。知識の習得は遠隔で効率的に実施し、対面での授業は手を動かしたり議論したりしながら、「リアル」でしか得られない経験を積んでいく場にする。「反転授業」と呼ばれ、教育効果を高められると注目されている学習スタイルだ。
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