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学校完全週5日制が始まった2002年度に生まれた現在の高校3年生。大学入試改革の初年度に当たって準備してきた「共通テスト」は方針が二転三転した。さらに新型コロナの問題が混乱に拍車をかけた。間もなく始まる入試はどうなるのか。

 「問題のレベルがイマイチ読めないんですよね。どうなるのか心配です」。東京・港の高校に通う3年生の女子生徒の表情はさえない。筑波大学または千葉大学の理系学部を志望しているこの生徒の心配の種は、「大学入試センター試験」に代わり新たに導入される「大学入学共通テスト」だ。

 2021年1月に実施される共通テストは、高校・大学教育と入試を一体的に変える「高大接続改革」の目玉として17年7月に実施方針が固まった。だが、制度の問題が次々に指摘され、当初の想定とは大きく変わっていった。ただでさえ新しい方式のテストに挑まなければならない上に、途中で方針がどんどん変わるという困難が今の高校3年生に降りかかった。

 混乱に拍車をかけたのが新型コロナウイルスだ。全国のほとんどの高校が2年生時の3学期を途中で切り上げ、3年生になった新学期は手探りしながらのオンライン授業になってしまった。

 さらに、進学先として目指してきた大学もオンライン授業に転換。都内のある私大教授は「授業はオンラインでできるが、学生たちが払っている学費には、キャンパスで過ごす時間や人間関係の構築への期待も込められている。そこに応えられていない」とコロナ禍での大学運営の難しさを吐露する。

 コロナのせいで、志望校のキャンパスを見学する機会も限られてしまった。ベネッセホールディングスの調査では「新型コロナで受験勉強や志望校選びに支障があるか」という設問に73%の受験生が「ある」と回答した。「なんでこの学年だけ……」。高校3年生の悩みは増すばかりだ。

(写真=朝日新聞社)

「共通テスト」の改革は限定的

 第1の混乱だった共通テストは、どう変わるのだろうか。「全体的にセンター試験よりも難しめに振れる」。こう話すのは駿台教育研究所(東京・千代田)の石原賢一進学情報事業部長。英語は、リスニング問題で2回流れていた音声が一部は1回だけになり、筆記問題では長文読解が増える。数学は、条件を読み解いて数学的考察を進めるような思考力を問う問題が多くなる見通しだ。

 「上位層はあまり入試の変化の影響を受けない」と石原氏は予想する。その上で、「センター試験で6割から65%ほどの得点率だったボリュームゾーンの受験生は、問題が難しくなった印象を持つだろう」と続ける。

 共通テストはもともと「英語での民間試験導入」と「記述式問題導入」の2つが改革の柱だった。

 センター試験では英語の「読む」「聞く」能力しか問わなかったが、共通テストでは「書く」「話す」能力も測ることを目指した。「英検」のような民間試験を入試前年に受けてもらい、選考に反映する方針だった。「入試で『4技能』を測定することで、英語によるコミュニケーション力強化につなげてもらうという考え方自体は間違っていない」(教育業界関係者)との評価が多い。

日経ビジネス2020年11月23日号 56~60ページより目次