世界各地で強制労働や児童労働、過酷な労働環境を強いるなどの人権問題が相次いでいる。そうして生産された物資を調達する企業への責任追及の流れが加速している。サプライチェーン上の人権問題の把握と対応が遅れれば、大きな経営リスクになりかねない。

コンゴ民主共和国(DRC)のコバルト鉱山。人力に頼り安全対策も未整備な採掘現場で児童労働が報告されている(写真=Sebastian Meyer/Getty Images)

 2019年12月、ショッキングなニュースが世界を駆け巡った。アップル、グーグルの親会社のアルファベット、マイクロソフト、デル、EV(電気自動車)大手のテスラが、児童労働にともなう事故の損害賠償を求める集団訴訟を人権団体から起こされたのだ。

 米国の産業界を代表する名だたる大手企業が、国際的に批判されている児童労働問題で提訴されたことに、世界の耳目が集まった。もっとも、児童労働の現場は、提訴されたこれらの企業や1次サプライヤーの事業所ではない。アフリカ中部に位置するコンゴ民主共和国(DRC)のコバルト鉱山でのことだ。

 コバルトは、リチウムイオン電池の電極材料などに使われるエレクトロニクス産業にとってなくてはならないレアメタルだ。DRCは、世界のコバルト産出量の約6割を占める。

 ただし、「重機ではなく人力に頼る手掘り鉱山と呼ばれる採掘現場が多く、安全対策も不十分な劣悪な環境で、児童労働が行われている」と東京大学講師でNPO法人RITA-Congo共同代表の華井和代氏は指摘する。こうした零細な鉱山での採掘中にトンネルや壁が崩壊した。死傷した児童の保護者である原告14人を代表して、非営利団体のインターナショナル・ライツ・アドボケイツ(IRA)が提訴した。

 同団体は、訴えられた企業が児童労働によるコバルトのサプライチェーン維持に加担していると主張する。国連児童基金(ユニセフ)の14年の報告によると、零細な鉱山が多いDRC南部だけで、約4万人の児童がコバルト採掘現場で働いていた。

続きを読む 2/5 いまだ残る“奴隷”制

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