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コロナ禍で大打撃を受けた京都の観光業は、Go To キャンペーンでわずかだが明るさも見えてきた。しかし、過去を振り返れば豊富な観光資源や、何の手も打たずとも増えるインバウンドに頼り切りだった。オーバーツーリズムの問題も生じていた京都。変われなかった1000年の都に、変化の芽が見えている。

観光客は徐々に戻ってきている(嵐山)(写真=大亀 京助)

 「少しだけど、ようやく明るい兆しが出てきた」。京都・嵐山の竹細工店「いしかわ竹乃店」の3代目、石川恵介さんはこう話す。嵐電嵐山駅から渡月橋へ抜ける目抜き通りに店はあり、近くの工房に3人の職人がいる。

 1月まで嵐山は連日大にぎわいだった。インバウンド(訪日外国人)が国内客より多く、石川さんの店も英語や中国語が飛び交った。客は常にいっぱいの状態なので、平日でも休祭日と同じほどの売り上げが立っていた。

 ところがコロナ禍でインバウンドが消え、国内客も減少。8月まで観光客はまばらで、売り上げは平年の1〜2割に落ち込んだ。ようやく回復の兆しが見えたのが9月の4連休だ。Go To トラベルの効果もあり、週末の来客は上向いた。だが、今も平日は集客が難しく、営業時間の短縮を続けている。

 石川さんは商売のあり方を見直し始めている。例えばインバウンド向けに売っていた「京都」と書かれたマグネット小物を、3月に入ってから店頭からほぼ撤去した。外国人客によく売れることから、ニーズに合わせて仕入れていた。

 その代わりに工房でつくった竹のアクセサリーやバッグを目立つ位置に置く。心からの自信を持って売れるのは無論、工房でつくるこれらの竹細工だ。「付加価値の高い店作りをしていく」。いろいろな商品を扱うお土産店から竹細工の価値を追求する専門店へ。これまで手薄になっていた接客の時間を確保し、商品の特徴を店頭でしっかりと伝えながら売るスタイルへと切り替えている。

日経ビジネス2020年11月2日号 44~48ページより目次