コロナ禍を契機に、欧州諸国では中国の強権主義への警戒感が高まっている。各国は対中戦略を転換。欧州連合(EU)は人権問題で批判と非難を強める。ただ、中国の経済力に依存する国は多く、「中国離れ」は簡単ではない。

昨年までの友好ムードが嘘のような首脳会談だった。
9月14日、欧州連合(EU)と中国の首脳によるテレビ会談が開かれた。EUの首脳陣は会議の中で、香港や新疆ウイグル自治区での人権問題に関する懸念を伝えた。中国国営の新華社によると、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席はEU首脳陣の懸念に対し、「中国は人権で『教師づら』する者を受け入れない」と語ったという。年内締結を目指すEUと中国の投資協定についても、フォンデアライエン欧州委員長が「中国が我々を説得する必要がある」と発言するなど、EUと中国の双方から厳しい発言が相次いだ。
2019年までは対面での会議だったこともあり、双方の首脳たちに笑顔が見れられたが、今年に入ってからは緊張感のある会談が続いている。それはリモートでの会議を余儀なくされていることばかりが原因ではない。新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、欧州と中国の関係が大きく変化し始めているからだ。
日本や東南アジアは中国との地理的な距離も近く、貿易面でもはるか昔から関係が深い。一方、中国から地理的には離れている欧州各国は、中国の急速な経済成長を取り込もうと、近年距離を縮めてきた。その欧州で対中戦略の見直しが目立つ。
これまで欧州各国は、中国政府と友好関係を築き、同国からの投資を積極的に受け入れてきた。上記の地図を見てほしい。00年〜19年までに英国は503億ユーロ(約6兆3000億円)、ドイツは227億ユーロ、イタリアは159億ユーロ、フランスは144億ユーロの中国からの直接投資を受けてきた。
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