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「アプリで出会って結婚しました」。会社の同僚や部下からそう聞いたらどう思うだろうか。コロナ禍で出会いが限られる中、人工知能(AI)を駆使したマッチングが進化している。世界で成長市場としても脚光を浴びる「出会いテック」。その最前線を追う。

マッチングアプリ上にプロフィルや写真を登録すると相手がレコメンドされる(右は「Omiai」の画面)

 「東京在住で身長は170cm以上。趣味は読書で土日休み。結婚の意思があり子供も欲しい人」──。

 都内の不動産系企業で働く20代女性の高木由紀さん(仮名)。結婚を前提とした出会いを求め、2017年の秋に始めたのがマッチングアプリだった。

「いいね!」を送り返すとマッチングし、その後、メッセージが送り合えるように(「ペアーズ」の画面)

 マッチングアプリとは、恋人探しや結婚相手探しなど、出会いを求める利用者同士を結び付けるスマートフォンのアプリのこと。写真付きのプロフィルを登録し、お互いに「いいね」といった意思表示を送り合うと、メッセージツールでやり取りができるようになるというのが基本的な仕組みだ。

 高木さんの場合、50人程度の相手と「いいね」を送り合い、その中の一人と付き合い始めた。その男性とは長く続かなかったが、再びマッチングアプリを通じて出会った男性と半年後に婚約し、結婚までとんとん拍子で進んだ。高木さんは「合コンで3人と会うのと、アプリで条件を絞った3人に会うのでは効率が違う」と話す。

 インターネット上の出会いと聞くと、かつての匿名型の掲示板「出会い系サイト」のような怪しいイメージを抱く人もいるかもしれない。ただ若年層を中心に、デジタル世界での出会いに対する意識は変わっている。約1万人を対象としたMMD研究所の調査によれば、20~30代のマッチングアプリの認知度は19年に27.8%と、16年と比べて13.7ポイント上昇した。

 市場としても有望視されている。独調査会社のスタティスタは、世界のオンラインデーティング(オンラインマッチング)サービスの売上高が17年の約15億8000万ドル(約1668億円)から24年には約25億ドルに成長すると予測する。

世界市場は2021年に20億ドルを突破する見通しだ
●オンラインデーティング市場の売上高推移
出所:スタティスタ(2020年5月)

 こうした動きを加速させそうなのがコロナ禍だ。学校や職場で実際に出会う機会が減り、不特定多数が集まる飲み会のようなイベントも開催しにくくなった。リアルの場での機会が限られる中、マッチングアプリに期待するユーザーが増えている。「いいね」を送る回数を増やせるなど、パートナーとより出会いやすくなる有料会員へ移行する利用者は少なくない。

 「マッチングアプリで出会って好きなオンラインゲームの話で盛り上がった。会ったことはなかったけど、自然と付き合うことになった」。都内に住む大学生の女性(22)はこう話す。この女性の交際相手の男性は山梨県に在住しており、遠距離での恋愛がこの春から始まったという。

日経ビジネス2020年8月31日号 42~46ページより目次