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広域化・激甚化する豪雨災害が私たちの生命や財産を脅かしている。従来、防災の主体だった官だけでは異常な気象変動への対応が難しくなった。AIから人工衛星まで、民間の技術を活用した官民連携が始まっている。

球磨川が氾濫した7月4日の熊本県人吉市の様子(写真=共同通信)
令和2年7月豪雨で熊本県の球磨川が氾濫して被害を受けた家屋や車(写真=共同通信)
球磨村渡地区にある特別養護老人ホーム「千寿園」が水没し入所者14人が亡くなった(写真=共同通信)

 7月3日から降り続いた「令和2年7月豪雨」。熊本県では日本三大急流の一つである球磨川が氾濫した。この豪雨の一報を聞きつけ、建築家の坂茂氏は現地に飛んだ。2014年に「建築のノーベル賞」といわれるプリツカー賞を受賞した坂氏が駆けつけたのは、避難所の生活環境を改善するシステムを提供するためだ。

 災害が発生した際、学校の体育館などに用意される避難所ではこれまで、床の上に雑魚寝をして急場をしのぐのが一般的だった。ところが、新型コロナウイルス感染症が拡大した今年は「ニューノーマル」への対応が避難所でも必要になった。そこで用意したのは、「紙管」と「布」を使った間仕切りを設け避難所の生活環境を改善する仕組みだ(右上の写真)。1セットが縦、横、高さそれぞれ2mの正方形となり、2人で使う。3~4人家族の場合は連結させる。「家族単位で空間を仕切ることで飛沫感染のリスクを低減できる」(坂氏)

熊本県人吉市の避難所に設置した紙管と布による間仕切り。建築家の坂茂氏(右)が考案した(写真=上:ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク提供、下:都築 雅人)

 坂氏が代表を務めるNPO法人は、このシステムを供給する災害時協定を大阪府や兵庫県など10府県、18市、2町、11区と締結している。今回、政府の要請を受けて、避難所となった人吉スポーツパレスや人吉市第一中学校など県内各所に設置した。

日経ビジネス2020年8月17日号 44~49ページより目次