エネルギー安全保障を配慮

 ところで、温暖化の点で全く歓迎されていないのに、我が国をはじめ多くの国で、なぜいまだに石炭火力の新設計画があるのか。環境面のみならず、将来、世界的に二酸化炭素回収費用を負担することが義務化されかねない状況を考えれば、疑問の残る投資だ。石炭火力への投資をあえて正当化するなら、理由の一つは地政学的配慮だろう。

石炭火力は今後もなくならない
●主要国の石炭消費量
<span class="textColTeal">石炭火力は今後もなくならない<br><span class="fontSizeXS">●主要国の石炭消費量</span></span>
注1:単位の石油換算トンは、各種の石炭のエネルギー量を石油1トン相当に変換したもの
注2:2040年は国際エネルギー機関による「予定されている政策に基づくシナリオ」
出所:国際通貨基金(IMF)、国際エネルギー機関(IEA)
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 日本のLNGの主要輸入国はカタール、オーストラリア、米国だ。どの国も政治的には安定し、我が国との外交関係も非常に良好である。しかし、カタールのLNGの輸送経路にはペルシャ湾があり、中東の政情不安の影響をもろに受ける可能性も否定できない。また、欧州のLNG供給は、ロシアからのパイプラインに大きく依存する点も見逃せない。ロシアの不安定化により欧州からのLNG需要が増加し、カタールからのLNG供給が減少する事態も想定される。備蓄が容易で輸入元も多岐にわたる石炭は、エネルギーの安全保障の点から重要な役割を果たし得る。我が国の他、石炭火力への依存が高い中国、インド、ポーランドはいずれもLNGを輸入に頼っている。

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