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今や待ったなしの地球温暖化対策。国際通貨基金(IMF)で長年シニアエコノミストとして活躍してきた筆者が、経済学者の視点から、気候変動が社会に及ぼす影響を2回にわたり考察する。

地球温暖化と化石燃料の消費には大きな関係がある。だが、それに対する認識の差と対策のコストが改善を阻む(写真=AFP/アフロ)

 地球温暖化とは一般的に、平均気温の上昇を指す。だが異常気象の発生頻度の上昇もその影響で、まとめて気候変動と呼ばれる。日本を襲った大型台風の頻度の高さや、異常乾燥による海外の山火事などから見れば、気候変動による人的・経済的損失は無視できない大きさにある。温暖化を引き起こす大きな要因は化石燃料の燃焼による二酸化炭素排出量の増加であり、その削減には急を要する。

 地球の各地で、平均気温の数年間分の平均値が、産業革命開始以前に比べて上昇している。平均値は地域横断面と時系列で取るため、統計学を理解する人間なら、東京の気温が1日極端に低かったり、米国のワシントンに記録的な大雪が降ったりしたからといって、温暖化を否定することにはならないと分かる。地球全体の大気の平均気温が前年と比べて若干低くなったところで、統計的な誤差にすぎない。

 緩やかな気温の上昇は地球上で均一に進むわけではない。氷河の融解による海面上昇以外にも、海水温の変動幅が上昇したり、異常気象の発生頻度が上昇したりしている。わずかな気温上昇が生態系に及ぼす影響はまだよく分からず、人間にはこの温暖化が非常にゆっくり進んでいると感じられる。

人類への影響と生態系のリスク

 人類は、異常気象の増加による自然災害と、温暖化による生態系の変化から影響を受ける。前者は、洪水や山火事などの影響を受けやすい地域がより損失を被る。治水、防火や保険契約などは所得に左右されるため、所得の低い地域や家計の方がより大きな損失を被る傾向がある。また昨シーズンに日本や欧州で見られたスキー場での降雪不足も異常気象の影響だ。異常気象が増えれば、経済的コストが発生する。