三菱電機やNECなどがサイバー攻撃を受けていたことが1月下旬以降、相次いで発覚した。関与が疑われる中国では人民解放軍を中心に10万人超のサイバー攻撃体制が整っている。自衛隊はまだサイバー反撃部隊を500人に増員中の段階。果たして日本国民を守れるのか。
●ハッキングなどの疑いで米FBIが手配中の被告たち

2月3日、三菱電機の皮籠石斉・常務執行役は神妙な面持ちで決算会見に臨んでいた。
それもそのはず、サイバー攻撃の被害に遭っていたことが2週間前の報道で発覚したばかり。ハッキングによって社外秘の営業資料や技術資料、さらに最大8100人分の個人情報が流出した恐れがある。当初は否定していた防衛関連の情報が漏洩していた可能性があることも後日、明らかになった。
皮籠石氏は「ご心配とご迷惑をお掛けした。全社を挙げ再発防止に取り組み、信頼回復に努めたい」と陳謝した。
三菱電機だけではない。防衛省と取引のあるNEC、神戸製鋼所、航空測量大手パスコもサイバー攻撃を受けていたことが2月上旬までに相次いで判明した。いずれも中国当局の関与が疑われる。
2011年の三菱重工業、15年の日本年金機構、16年のJTBなど、これまでも中国当局のかかわりが指摘されるサイバー攻撃は繰り返されてきた。今回も過去の反省が生かされることはなかったというわけだ。
これらの事例は氷山の一角にすぎない。そもそも被害に遭ったことに企業が気づいていなかったり、被害を隠蔽していたりするケースも多い。中国によるサイバー攻撃は報じられているよりもはるかに大きな規模で実行されているのが実情だ。軍や諜報機関、民間の協力者を含めると、中国では10万人を超える規模のサイバー攻撃体制が整っているとされる。
日本企業はまず「敵を知る」ことから始めなければならない。
謎の32069部隊
中国・北京市中心部の天安門広場から北西に15km余りの位置に人民解放軍の駐屯地がある。高い塀に囲まれた敷地内の新築ビルに本部を構えているとされるのが32069部隊だ。
中国軍は部隊の役割を類推されたくない場合、本来の部隊名とは別に、5桁の識別番号を表向きの呼称とする。32069部隊もそうした秘匿性の高い組織の一つだ。
本来の部隊名を「ネットワークシステム部(NSD)」という。
NSDの任務は2つある。一つは電磁波などで敵軍のレーダーや通信をかく乱する電子戦を闘うこと。NSDの関係者が電子戦の技術論文を執筆するなど、活動の一端が垣間見えてきている。
これに対してもう一方の任務は、表にほとんど情報が漏れてこない。厳しいかん口令が敷かれていることをうかがわせるその任務こそ、サイバー戦の遂行だ。社会のネットへの依存度が深まるとともに、サイバー戦の重要性はかつてなく増している。
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