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職人の人手不足や建築資材の調達コスト高騰に悩まされている住宅業界。少しでも安価な住宅を提供するため、企業はあの手この手の工夫を続けている。持ち家希望者の懐に優しいコスパの高い家はどのようにして生まれるのだろうか。

アーネストワンが例年開く「スピードビルド」。戸建て住宅の建設スピードを競い合う。2019年に優勝した京都営業所の記録は24時間2分だった

 日銀の大規模な金融緩和による投資マネーが流れ込み、活況を呈する不動産市場。とりわけ東京都区部や都下では不動産開発が活況だ。だが、住宅の買い手にはありがたい話とは限らない。

 厚生労働省によると、世帯主が30代の平均世帯年収は600万円弱。初めての持ち家を望む消費者にとって有力な選択肢だったマンションの用地は、駅近など好立地をめぐるホテルやオフィス、商業施設などとの競合が激しく、取得費用は年々上昇している。

 その結果、不動産経済研究所(東京・新宿)の調査によれば、2013年に5800万円台だった東京23区の新築マンションの平均価格は足元で約7300万円となった。都心の駅近ともなれば、1億円を超えることもざらにある。

 新築マンションが高根の花となりつつある中、新たな選択肢となっているのは、コストパフォーマンスを売り物にする住宅メーカーの物件だ。少しでもリーズナブルな住宅を提供しようと工夫を続ける裏側をのぞいてみよう。

 建築資材や設備の価格が上昇する中、建築コストのおよそ30%を占める人件費は住宅メーカーの努力によって削減できる部分だ。その人件費を左右する工期を短縮することでコストを抑えているのが、パワービルダーと呼ばれる戸建て分譲事業者だ。

建設資材の調達コストも上昇している
●建設資材価格指数の推移(2015年=100)
出所:経済調査会

 一戸の住宅を作るのに120~180日ほどかかる注文住宅メーカーに対して、パワービルダーは約60~90日と約半分の工期で済む。戸建て分譲住宅の販売で全国3割のシェアを占める飯田グループホールディングス傘下のアーネストワンでは、独自の取り組みで工期短縮を図っている。

 それは、各地の営業所が一斉に戸建て住宅の建設スピードを競い合う「スピードビルド」。営業所長の音頭の下、営業所の社員や普段、仕事を依頼する職人が総出で家造りに取りかかる。

 2019年9月に開催されたスピードビルドでは全国79営業所が参加、24時間2分の“新記録”で戸建て住宅を建てた京都営業所が優勝した。現場に立ち会った生産事業統括部長の竹内豪氏は「前の日にも通りかかった近所の人が、出来上がった家を見てあぜんとしていた」と振り返る。過去10年を振り返れば、工期は10日ほど短くなっている。

建築単価は注文住宅の半分

 なぜ家造りのスピードを競うイベントを毎年のように開いているのか。パワービルダーの工期が短い理由としては設計や資材の共通化がある。それに加えて、「段取り力」を磨くことでさらなる工期短縮につなげるのが狙いだ。

 「普段から職人とコミュニケーションをとっているか、足場や作業動線を工夫しているか、役割分担や作業手順を見直しているかといった小さな積み重ねが勝負を分ける」と竹内氏は話す。