会社に縛られずに働きたい専門職の人が選択してきた仕組み、フリーランス。その一形態として、ネットを介して単発で仕事を受けるギグワーカーと呼ばれる人が急増している。雇われるべきか否か──。何がベストの働き方なのかという模索が始まっている。

「我々はこの働き方を望んでいる。ウーバー側は現場の声を聞き、質問に対し、合理的な説明をしてほしい」。12月5日、飲食店からの配送サービス、ウーバーイーツのアプリを使って仕事を請け負う配達員の労働組合、ウーバーイーツユニオンが都内で記者会見を開いた。自身も配達員である前葉富雄執行委員長は、ウーバー側の態度に語気を強めた。
ウーバーイーツの配達員は雇用関係を伴っていない。スマートフォンのアプリを通じて配達を請け負い、飲食店に立ち寄って注文の品をそろえ、指定された場所で手渡しする。米国の仕組みを日本に持ち込み、2016年9月に始まったデリバリーは東名阪や福岡など10以上の都市に広がり、今では1万4000店(19年9月時点)の飲食店の配送を代行している。
黒や緑の特徴的なバッグを背負って自転車やミニバイクで駆け回る姿は都市部では珍しくなくなった。宅配の食事を従来のそば・うどん、寿司やピザからファストフードやレストランチェーンに広げ、若年層を中心に支持を得た。
この配達網を1万5000人いるとみられる配達員が支えている。しかし、急速にサービスが広がることで次々に発生している事故やトラブルへのウーバー側の対応が不十分というのがユニオンの言い分だ。
都内でウーバーイーツの配達員として生計を立てる河合道夫さん(仮名、43)は今年7月、雨の降る世田谷区内を原付バイクで配達中にスリップ事故を起こした。頭や手足の打撲と肩の亜脱臼で全治2週間。1万7000円の治療費は河合さんが全額、自己負担した。
事故の経緯を連絡したウーバーからの返信メールにはお見舞いの言葉とともにこんな文言が続いたという。「今回のようなことが再度あれば、あなたの(アプリの)アカウントは永久停止となるかもしれません」「回復されましたら、配達パートナー様としてご協力いただければ幸いでございます」──。送信元の連絡先は記しておらず、治療費にも言及はない。「『お見舞い』と書いているが、いたわっているのか、不注意をとがめて暗に脅されているのか分からない」と河合さんは振り返る。

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