
「中国の日常生活は数十年前の日本に近い」。そのような見方は既に古い。デジタル化と消費の高度化により、日本にはない「売り方」が次々に登場している。今や世界の先端を行く中国のマーケティング手法は、日本においても通用する。

7月12日、米コーヒーチェーン大手、スターバックスが中国北京市で一風変わった店をオープンした。
そこにあるのはビジネスパーソンや学生がゆったりとくつろぐ姿ではなく、アプリを提示し、レジから商品を手早く持ち帰る人たちの姿や、袋を受け取った配達員が電動スクーターに乗って街の中に駆け出す姿だった。スマートフォンなどからの注文に特化した新型店舗「スターバックス ナウ」だ。
昨年8月、スタバは「餓了麼 (ウーラマ)」を傘下に持つアリババ集団と提携した。ウーラマはレストランで作った食事などを配送するサービスを手掛ける。スタバはその配送網を活用して利用者がオフィスや家に居ながらにして、アプリから注文できるサービスを実現した。既存店舗でも、店に着く前のアプリ経由での注文受付や配送サービスを拡大している。
ベンチャーに揺らぐスタバ
スタバは家庭、オフィスに次ぐ「サードプレイス」というコンセプトが受け入れられ、世界中で店舗を拡大してきた。それは中国でも例外ではなく、今や業界でも圧倒的な存在感を持っている。上質なコーヒーと空間を、時間を気にせずに楽しんでもらう。そのスタバが堅持してきた価値と一見相いれない、事前注文や宅配といった方向にかじを切った背景には何があったのか。
スタバの路線転換の背後には、ある急成長するベンチャー企業の姿があった。
「瑞幸咖啡(ラッキンコーヒー)」。2018年1月に北京で1号店を出したばかりの企業だが、現在中国全土で3000店舗を展開するまでに成長し「年内に4500店舗にする」との目標も公言している。今年5月には米ナスダック市場への上場を果たした。

だが、中国を訪れた人が実際にラッキンコーヒーの看板を見る機会は少ないはずだ。その理由はラッキンコーヒーのビジネスモデルにある。ラッキンコーヒーは店頭での注文はできない。利用できるのはアプリからのみで、スマホの中で注文から支払いまで完結する。店舗は現金を扱わず、コーヒーなどを作ることに専念できる。そのため、ほとんどの店舗はビルの一角にごく小さいスペースで出店している。
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