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スマートフォンで自撮りしたトークや歌をライブ配信する「ライバー」が増えている。市場規模は9カ月間で2倍近くとなり、月1000万円を手にするライバーも現れた。収入源は視聴者からの投げ銭だ。芸能事務所の中抜きを加速させている。

独自のリン語を操るシングルマザーのringotan(左)と、ライブ配信に生きがいを見つけた72歳のせんちゃん(右)

 地球の隣に位置するリン語星からやってきたringotan(リンゴタン)は、西日本のとある地方都市で暮らす。「ありがとりんごまる」などと独自のリン語を操り、明るく振る舞うが、実は苦労人だ。

 夫の不倫が原因で離婚したのは5年前。追い打ちをかけるように元夫からの養育費の支払いがストップし、2児を抱えて経済的に行き詰まった。パートの仕事を見つけて働き始めるも、苦しい生活は続いた。

 転機は突然訪れた。知人からスマートフォンのライブ配信アプリ「17 Live」を紹介されたのだ。2018年夏以降ほぼ毎日、子どもたちが寝静まった午後11時になるとスマホの前でringotanに変身し、自撮りでリン語トークを披露している。

 動画サイト、ユーチューブで人気のHIKAKIN(ヒカキン)やヒカルなどが「ユーチューバー」と呼ばれるように、ライブ配信者は「ライバー」と呼ばれ、職業として認知が広がっている。

視聴者と生トークを楽しむ

 トークから歌、お笑い、ゲーム実況まで、ライブ配信の内容は多彩だ。収録・編集した動画を流すユーチューバーと違って、ライバーは視聴者からリアルタイムでコメントを受け付け、コミュニケーションしながら配信するのが特徴である。

 収入源も異なる。ユーチューバーは動画に表示する企業の広告なのに対して、ライバーは視聴者から贈られる有料のポイントが収入源だ。

 通行人が路上のパフォーマーに小銭を渡す投げ銭に似たシステムであることから、投げ銭型のライブ配信などと呼ばれており、中国で先行して普及が進んだ。

 市場を切り開いたのは広州に本社を置く05年創業のYY直播(ジーボー)である。19年4~6月期の売上高は前年同期比67%増の63億元(約945億円)と急成長。月間の利用者数は1億5000万人近くに達した。現地には億単位の年収を稼ぐトップライバーもいるとされる。

 ringotanが利用する17 Liveは台湾が発祥だ。地元企業の17 Mediaが15年から提供しており、日本には傘下の17 Media Japanを通じて17年9月に上陸した。通称は「イチナナ」だ。

 それまで日本の投げ銭型ライブ配信市場はDeNA傘下のSHOWROOMの1強だった。17 Mediaが参入してからは17 Liveが急速に追い上げた。18年7〜9月期の売り上げ規模はSHOW-ROOMが約14億1900万円だったのに対し、17 Liveは約14億7200万円に上り、肩を並べた(米フロスト&サリバンの資料から計算、資料ではドル表記)。

 同期における国内市場全体の規模は約51億2100万円に達している(同)。9カ月前の17年10〜12月期と比べて92%拡大した。

投げ銭型ライブ配信の市場規模と利用状況
日経ビジネス2019年9月23日号 56~59ページより目次