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新卒一律で支給されてきた初任給を見直す企業がIT業界で増えている。エンジニアを対象に新入社員でも年1000万円超の報酬を支払えるようにする企業も出てきた。人材獲得競争の激化を物語るが、「脱・新卒一律」の動きはIT業界だけで終わらない可能性もある。

(写真=PIXTA)

 「企業が変わらなければ、いい人材は採れない」。NECの西原基夫CTO(最高技術責任者)が危機感をあらわにする。同社の競争力の源泉となるIT(情報技術)人材の獲得競争が激しさを増していることが背景にある。

 転職サービス「doda」の調査ではIT・通信系業種の2019年8月時点の求人倍率は8.33倍に達した。2番目に求人倍率の高いサービス系(3.07倍)と比べても3倍近い開きがある。独立行政法人情報処理推進機構の「IT人材白書」によれば、18年度にはIT企業の31.9%がIT人材が「大幅に不足している」と回答。この比率は年々高まっている。

IT人材は慢性的に不足している
●IT人材の採用で“量”に対する過不足感
出所:独立行政法人情報処理推進機構 社会基盤センター「IT人材白書2019」

ファーウェイが引き金

 圧倒的に不足するIT人材。各社は新卒採用の段階から囲い込みを進めようと躍起になる。象徴が、IT業界を中心に繰り出される初任給の引き上げだ。

 17年、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の日本法人が、初任給40万円で新卒エンジニアを募集した。これを契機にIT各社を中心に、初任給を上げる動きが広がった。

LINEは学生向けに週給10万円の長期インターンシップを開催し、優秀なエンジニア人材との接触を図る

 対話アプリのLINEでは19年卒の新卒採用から、エンジニアの最低年俸を528万円とそれまでの501万6000円から積み増した。より高度な課題を設定した選考コースを通過すれば、同700万円という。

 ネット企業のディー・エヌ・エー(DeNA)やヤフーなどもAI人材やウェブサービスの開発者を対象に、学部卒の標準モデルより高い年収を提示。ソニーも19年度からAIなどの先端領域で高い能力を持つ新入社員の給与を最大2割増やす方針を示している。

日経ビジネス2019年9月23日号 68~70ページより目次