英国で現地小売業の経営破綻や大量の閉店が相次いでいる。背景にあるのはネット通販の普及だが、米アマゾン・ドット・コムの影響は限定的だ。ネットに特化した英国発の食品スーパーやアパレルが、新サービスで事業を広げている。
英国・ロンドン屈指のショッピング街、オックスフォード・ストリート。通りには百貨店やブランドショップが並び、人の往来が絶えない。
ところが通りに面したいくつかの店に足を踏み入れると雰囲気は一変する。8月後半の土曜日の書き入れ時にもかかわらず、大手百貨店のデベナムズやハウス・オブ・フレイザーの店内は買い物客の姿がまばらだ。これらは経営破綻した後に営業を続けている店舗で、まるで活気がない。日本でもなじみのある音楽・映像ソフト販売のHMVも2018年12月に経営破綻し、旗艦店のシャッターを閉めたままだ。
ネット通販普及率、世界2位
英国ではここ数年、小売りの経営破綻、大量閉店が相次いだ。このほかにも衣料品のニュールックが大量閉店し、レストランチェーンのジェイミーズ・イタリアンが経営破綻している。大手食品・衣料品スーパーのマークス&スペンサー(M&S)は22年までに100店舗強を閉店する。
異変が起きているのはロンドンの繁華街だけではない。主要駅の近くにある「ハイストリート」と呼ばれる商店街では状況はさらに深刻だ。英小売協会の調査では、19年7月の全英の店舗の空室率は10.3%で、15年以降で最悪の水準になった。地方ではシャッターが下りた店舗ばかりのハイストリートも珍しくない。中心市街地を空洞化させた郊外のショッピングセンターでも、シャッターを下ろした店舗が目立つ。


欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を巡る騒動で、国力を落とした印象が強い英国だが、経済は19年4~6月期にマイナス成長となるまで、12年からプラス成長が続いていた。大量閉店の原因は、景気後退よりもネット通販に需要を奪われた影響が大きい。
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