全3447文字

学生優位の「売り手市場」が続く2021年卒予定の学生の採用活動。人手もコストもかけて採用したにもかかわらず、入社数年で離職する社員も少なくない。どうしたら新卒社員に活躍してもらえるか。採用時点からミスマッチを防ぐ手立てを探る。

(写真=PIXTA)

 「これまでどのような活動に力を入れてきたのですか」「なぜその活動を始めようと思ったのですか」──。

 企業の採用面接でかなりの確率で聞きそうなこの質問。だが、聞こえてくるのは女性の人工的な音声。就活生が向き合うのは、スマートフォン(スマホ)だ。組み込まれているのは、AI(人工知能)を応用したチャットボット(自動会話プログラム)。「積極性」「計画性」など11の評価項目について、AIが十分な回答を得られたと判断するまで質問を繰り返す。長い人では面接時間が数時間に及ぶこともあるという。

 こんな“AI面接官”を実現したのが、採用支援サービスのタレントアンドアセスメント(東京・港)だ。2017年に「SHaiN(シャイン)」の名称でスマホのアプリとして提供を開始。特殊光源メーカーのウシオ電機など100社近くが導入している。

 金融サービスの日立キャピタルも導入企業の一社だ。19年卒の採用活動から1次面接で取り入れた。AI面接で得た回答は、タレントアンドアセスメントの専門の分析スタッフらが解析して点数化し、面接時の受け答えのテキストデータとともに提供される。企業の採用担当者はこのリポートを読み込みながら、学生の能力を見極める。

20年以上続く「3年3割」

 企業の採用担当者にとって悩ましいのは、せっかく入社した社員が与えられた業務に満足せずに離職してしまうこと。これは今に始まったことではなく、厚生労働省によれば、大卒就職者の3割が3年以内で離職する「3年3割」が20年以上続いている。この数年の傾向では、入社後1年目で1割強、2年目で約1割、3年目で1割弱と、ほぼコンスタントに離職者が出ているという。

変わらない離職率と厳しい充足率
●新卒3年以内の離職率と企業の採用充足率
出所:厚生労働省「新規学卒者の離職状況」、マイナビ「2019年卒マイナビ企業新卒内定状況調査」

 なぜ、早期離職者は出るのか。全国求人情報協会が18年10月に発表した調査結果によると、離職の理由は「仕事内容への不満」が51.5%と最も多く、次いで「人間関係への不満」が40.9%で続いた。入社前に思い描いていた環境との違いが大きな要因のようだ。

 もっとも、人材情報大手マイナビ(東京・千代田)が毎年調べている内定者数を募集人員で割った採用充足率は19年卒で85%弱だ。そもそも企業にとっては十分に人材を確保できていないだけに、人手もコストもかけて採用した人材の離職は防ぎたいのが本音だろう。