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人手不足の高まりを背景に、小売り・物流の現場にRFIDを導入する試みが広がってきた。小売りでの本格普及には課題が残る一方、医療機器などの流通では業界全体が動きつつある。サプライチェーンの効率化にとどまらず、商品が消費される場面までの情報を得られるかどうかが普及の鍵だ。

ローソンは「CEATEC JAPAN 2018」にRFIDを利用した無人決済などを備えたブースを出展した。16年度からの実証実験で蓄積したノウハウを生かしている

 今年2月、ローソン本社が入る高層ビルの地下にあるコンビニ店舗「ローソンゲートシティ大崎アトリウム店」の入り口に、デジタルサイネージを併設した特殊な商品棚が現れた。棚からパンを手に取ると、その商品の情報がデジタルサイネージに映し出された。パンをレジに持っていくと、店員がバーコードを読み取る前に金額が表示される。スマホ決済「LINE Pay」で支払いを済ませ、店を出た。後日確認すると、LINE Payには10ポイントが振り込まれていた。期限切れが近いパンを選び、食品廃棄の削減に協力したからだ。

 ローソンが経済産業省と組んで実施した実証実験で、客はそんな不思議な買いものを体験した。店内での商品情報の表示、レジでの商品の自動認識、そして廃棄ロス削減を目指した実質的なダイナミックプライシングを含んだ取り組みは、パンの包装に貼り付けた無線通信用の電子タグ(RFタグ)によって実現した。

 RFタグに商品の個体情報を記録し、どこに何があるのかを自動認識する技術はRFIDと呼ばれる。無線周波数を示すRFと個別IDの頭文字を取った言葉だ。RFタグは個体情報を記憶したICチップとデータを送受信するアンテナ、それらを固定するPETフィルムなどの基材で構成される。

 広く浸透しているバーコードと異なるのは、読み取り機に直接かざす必要がないことだ。無線だから1つの読み取り機で多数の個体情報を離れたところから一斉に識別できる。1990年代の実用化以降、物流倉庫や店頭でモノを1個ずつ簡単に管理したり、レジでの精算が瞬時にできたりする夢のような技術と目されてきたが、特定の業界で徐々に浸透するにとどまっている。

 その理由は高コストのためと説明されてきた。RFタグは2000年代前半に1枚当たりおおむね100円台だった。技術が進んで今では10円台から数十円台に下がっているが、使い捨てとなる小売りで商品1個ずつに貼り付けるにはまだ高い。回転ずしチェーンのお皿や図書館の蔵書といった限られた場所で何度も使い続ける用途が多かった。

日経ビジネス2019年8月19日号 44~48ページより目次