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海賊版サイト「漫画村」の元運営者の拘束で、著作権保護への関心が改めて高まっている。もっとも、これまでコピー大国と思われていた中国でさえ、著作者にお金が回る仕組みづくりが進んでいる。漫画村が閉鎖されても、似たようなサイトが続々と生まれる日本からは、お寒い著作権事情が浮かぶ。

海賊版サイト「漫画村」へのアクセスはできない状態になっている(写真はイメージ)(写真=スタジオキャスパー)

 「悪いからやめようと感じたことはないですね。周りの友人もみんな使ってますから」

 悪びれずにこう語るのは、違法コピーした漫画などを掲載する海賊版サイト「漫画村」を利用したことがあるという大学生の男性(22)だ。2016年ごろに開設された同サイトに掲載された作品は数万点。人気作品であっても閲覧無料だけに、18年4月に閉鎖されるまでに延べ6億人以上が利用したといわれている。

 一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構によれば、漫画村による被害額は約3200億円。出版業界に大きな打撃を与えたサイトの運営を主導したとされる星野路実容疑者は19年7月上旬、フィリピンの入管当局に拘束され、サイトの運営にかかわった男女2人も著作権法違反容疑で逮捕された。捜査当局は10人以上が運営に関与していたとみており、運営実態の解明を急いでいる。

 だが、そうしている間にも後継サイトが続々と誕生している。すでに10~20サイトが漫画村と同じように違法コピーした作品を公開。中には個人情報の流出や、ウイルス感染の危険があるサイトも目に付く。

 海賊版サイトは広告収入モデルで成り立っているケースが多いとされる。こうしたサイトへの広告出稿を止められれば、運営者の資金源を断つことができるはず。しかし、今の広告配信システムはいくつもの事業者を経由して、自動的に配信される仕組みのため、特定の海賊版サイトへの広告出稿を止めさせるのは難しい。

主な漫画の海賊版サイトの事例
出所:出版広報センター

 海賊版サイトのURLをまとめて表示し、利用者を誘導するリーチサイトの存在も見逃せない。海賊版サイトはURLをたびたび変えるが、リーチサイトがそうした情報を補う構図だ。集英社編集総務部法務グループの伊東敦氏は「海賊版サイトをなくすための特効薬はない。削除だけでは限界がある」と嘆く。

 漫画村の事態を受け、政府も海賊版対策に力を入れようとはしてきた。18年6月には内閣府の知的財産戦略本部が有識者会議を設置、違法サイトへの利用者のアクセスを遮断する「サイトブロッキング」に関する議論を始めた。日本ではネット上で海賊版が見つかれば、権利者は接続事業者に対して削除請求できるが、海賊版の多くは海外のサーバーを使っている。日本の法律は適用されず、権利者保護が進まないため、国内の利用者の通信そのものを遮断してしまおうというブロッキングの導入を検討した。

スマホで簡単にアクセスできてしまう
●米コピーライト・クリアランス・センター(CCC)の仕組み
日経ビジネス2019年8月5日号 48~52ページより目次