三枝:日本企業の経営手法を見ても、1つの組織の単位が大きくなり過ぎました。サラリーマン化とともに、「組織の肥大化」も懸念材料で、今後の足かせにもなります。

 1つの事業の規模が数千億円から1兆円に及び、その事業トップの下の組織が機能別になっている会社は、米国ではまれです。組織が大きくなると「創って、作って、売る」という事業の基本的なサイクルの回転が遅くなります。また、肥大化した組織の中では、リーダーには突出よりも「うまく収めること」が求められます。こうなると組織のリスク志向は縮み、リーダーの経営的力量は一向に上がりません。

先輩は戦犯、自分も今や……

三枝さんは組織を飛び出しました。かたや小林さんが所属する三菱グループは保守的な印象があります。お2人は「組織」とどう向き合ってきたのですか。

小林:僕は入社時から外れ者で、留学などを経て三菱化成に入ったのは28歳、時期も12月でした。当時、人事部に電話すると採用試験は終わったと断られました。ただ人脈をたどって研究所に遊びに行くと、「おまえ、来いよ」と誘われた。今、新卒一括採用を廃止する・しないの議論になっていますが、いつの時代でもやろうと思えばできるはずなんです。

 なぜ自分がここまで来ることができたかは今でも不思議です。研究所で試験管を振っていた人間が、経済同友会の代表幹事になったのですからね。

 三菱ケミカルについては絶えず事業転換しないと、どうにもならない状況でした。「先輩は戦犯」。僕はこう言い続けています。仮に前任者がとんでもない事業を始めたとしたら、口に出して行動に移さなければ変えられない。逆に言えば、自分も先輩になった今、いつ戦犯扱いされてもおかしくないと思っています。むしろ、「社長・会長が始めた事業なので……」というおもんぱかりこそ、いらない。後輩に対してはこんなスタンスで接しています。

三枝:杭も出すぎりゃ打たれない。小林さんは気骨と価値観を持って、かなり根性ある生き方をされてきたのだと思います。そこまでの人は少ないですよね。今、こういう強い「個」を持つ人材に頼らなければならない時代が来ています。生意気な人材が外れ者だった時代が、必要とされる局面に変わってきた面があると思います。

 私は大学を出て入った三井石油化学を途中で飛び出し、そこからはもうぐちゃぐちゃな外れ者人生でした。それでも最近は、「三枝さんの生き方はよかった」なんて言う人が圧倒的に多くなりました。「輝かしい人生ですね」と言う人までいます。かつて外れ者と思われた生き方の位置づけが変わったのは間違いありません。外れ者を重用する組織になれば、今度は旧来型の秩序が崩れます。果敢な改革ができるかは、そこ(を恐れないかどうか)にかかってきます。

小林:三菱ケミカルはここ数年で、CTO(最高技術責任者)、CIO(最高情報責任者)、データオフィサーのCDO、CMO(最高マーケティング責任者)などを外部から採用しました。もう、会社の中からでは人材が育たないのではないかという思いもあります。社外取締役を務めている東芝ではCEO(最高経営責任者)を外から連れてきました。

 ダイナミックに組織を動かしていかないと、世界の速い変化に対応できません。恐らく今後5年で日本企業はガバナンスを大きく変えざるを得ないでしょう。物言う株主をはじめ外からの目線を活用した方が、効率性が良いのではないかと考えています。

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