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2000年代は兆円単位の買収額となる大型M&Aが本格化した。人口減などによる国内市場縮小が日本企業の経営を大きく変えた。周到な準備と新たな経営手法がカギに。企業によって大きな明暗も。

 日本たばこ産業(JT)社長、寺畠正道は1999年後半、スイス・ジュネーブで悩ましい日々を過ごしていた。JTは同年5月、米たばこ大手、RJRナビスコの海外たばこ事業(RJRI)を、日本企業による海外企業買収としては当時最高額の約9400億円で傘下に収めた。まだ30代の事業企画室調査役だった寺畠は、RJRIの本部のあるジュネーブに乗り込み、JTとの事業統合計画策定に携わっていたのだ。

2005年12月5日号
特集は「成功するM&A」。企業買収が活発化した動きをリポートしつつ、企業価値向上には買収後の経営力がカギと指摘した。

 ところが、一筋縄ではいかない。統合となれば当然、同じ地域で重複する工場をどちらかに絞るといった作業が必要になる。そんな厳しい議論をする中で、RJRI側の相手から反発されることがあったのだ。

 寺畠にその意図はなかったが、日本企業の場合、得てして「買収側だから」「慣れた施設だから」といった理由で自社の工場を残そうとする傾向がある。相手はそう受け取ったのかもしれない。工場の生産性、物流上の有利さなど、ありとあらゆる点に目を配らないと議論は進まず、一方でRJRIに甘いスタンスを取れば、JTの本社から不満が出かねないというプレッシャーの毎日だった。