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2000年代の日本経済は格差拡大の時代でもあった。非正規労働者が激増し、リーマンショックで低賃金層が苦境に。働く人だけでなく、首都圏と地方との格差も極大化した。

 今は東京都内のホームレス支援施設で週2日ほど働く植野行夫(仮名)は、約10年前、自分自身も数カ月間、路上で生活をした。

 1987年にコンピューターの専門学校を23歳で卒業した後、大手電機メーカーの下請けソフトウエア会社に入社。技術者として40歳近くまで働いたが、2003年、会社が業績不振に陥りリストラに遭う。当時の上司の紹介で、半年後に派遣社員として別の会社で仕事を見つけた。ただ、年収は以前の400万円超から260万~270万円に減った。アパートの家賃を支払い、光熱費や携帯電話の料金など必要経費を差し引くと、生活はぎりぎりになった。

2005年7月18日号
特集は「分断国家ニッポン」。フリーターなどが増える一方で、起業で成功した新富裕層の台頭など、階層分化の実態をリポートした。

 「派遣先がある時だけ寮に住める契約だったから、相手側の会社に仕事を切られるのが一番怖かった。いつも緊張していた」

 幸いしばらくは仕事が途切れなかったが、08年春、雇い止めとなりついに職を失った。米国でサブプライムローン問題が深刻化し、景気の先行きに慎重になった派遣先企業が契約を打ち切ったのだ。

 その秋に追い打ちをかけたのがリーマンショックだった。生活のためチラシなどを各家庭に配るポスティングのアルバイトを始めたが、「10万円の約束の給料が3万円しかもらえず、わずかな蓄えも底をついた」。そして気がつくとJR中央線のあるターミナル駅で寝泊まりするようになっていた。