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せっかく新商品を出しても、気づけば周囲はライバルだらけ。利益を出すのも難しい。そんな血で血を洗うような激烈競争のレッドオーシャンに飛び込む企業が後を絶たない。どうすれば、レッドオーシャンを避けて確実にもうけられるのか。

乳酸菌入りの食品は菓子だけでなく、調味料や酢などに広がっている(写真=スタジオキャスパー)

 東京都目黒区にあるイオングループの総合スーパー「イオンスタイル碑文谷店」。売り場を歩くと、「乳酸菌」と書かれた商品が数多く目に飛び込んでくる。チョコレートからグミ、調味料、酢など、種類は幅広い。いずれも乳酸菌を含めることで、胃腸の働きを良くしたり、免疫力を高めたりする効果をうたう。

 過熱する乳酸菌入り食品市場。その裏では、原料として乳酸菌を供給するメーカーのひしめき合いがある。

 「こんなに競合が増えるとは思わなかった」。キリンホールディングスのヘルスサイエンス事業部の佐野環部長はこうこぼす。同社は乳酸菌の外販ビジネスに2017年12月に本格参入。当時、既に森永乳業や亀田製菓、日東薬品工業など5社程度が乳酸菌を販売していたが、それでもプレーヤー数は少ないと判断。自社で培ってきた乳酸菌の活用を狙って参入した経緯がある。

 だが、その後も乳酸菌市場には続々と競合メーカーが進出してきた。ハウス食品グループ本社や大塚製薬……。今では少なくとも8社が食品メーカーなどに乳酸菌を供給している。

 調査会社の富士経済(東京・中央)によると、食品素材としての機能性乳酸菌市場は22年に528億円に成長すると予測される。健康ブームの後押しを受けて、市場の将来性は確かにあるが、人口減の国内市場ではその成長性にも限界がある。

 競合が増えれば、乳酸菌の希少価値も低下する。本来、付加価値の高い原料として売り出すつもりだった各社も価格競争の波にのまれる。ハウスウェルネスフーズ健康素材ビジネス事業部の曽我恒太郎部長は「今後、淘汰されるメーカーも出てくるだろう」と指摘する。

 多数のライバルがひしめき、血で血を洗うような競争の激しい市場を意味するレッドオーシャン。ある経営トップは「実は日本企業は今、レッドオーシャンに飛び込みやすい環境にある」と明かす。

 背景にあるのは、少子高齢化など、社会構造の変化だ。国内市場の成熟化で既存事業が立ち行かなくなりつつあり、新規事業の立ち上げが急務になっている。加えて、デジタル技術の革新が事業モデルの変革を迫る。モノを保有せずに共有して使うシェアリングエコノミーの台頭は、あらゆる業界の販売モデルを揺さぶっている。

日経ビジネス2019年5月20日号 46~50ページより目次