眠った「右脳」を呼び覚まそう

 これまで見てきたように、オープン編集会議の取材からは、「デザイン」は、課題の発見・解決、理念の共有、前例の打破、顧客志向の徹底など、幅広い役割を担っていることが分かった。

 「『デザイン経営』宣言」の取りまとめに参加したデザイナーの一人、HAKUHODO DESIGN(東京・港)社長の永井一史氏は、「『デザインとは何か』の概念は多様で、研究会も一時は分裂しそうになったほど」と打ち明ける。ただ、「現状に挑み、良くしていこうという行為が全てデザインだ」(永井氏)という指摘については、取材に参加したオープン編集会議メンバーの多くがうなずいた。

 4月3日、取材を終えて再びメンバーが集まった。水嶋玲以仁氏は「当初、『デザイン経営』の定義がよく分からなかったが、エモーショナルに周囲を巻き込む力、くらいに理解すればよいのではないか」と指摘。確かに、デザインの解釈は広い。しかし、経営指標や過去の成功体験に縛られ硬直化しがちな組織を再び活性化するツールとして、デザインの概念を位置付けるのがよいのではないかといった意見が相次いだ。

 数字をベースに理詰めで語る経営が「左脳」的な仕事だとすれば、デザインは、数字ではとらえきれない価値を発見し、エモーショナルに周囲を巻き込んでいく「右脳」的な仕事といえる。そして、両方の脳をバランスよく使うのが、「デザイン経営」というわけだ。

 エンジニア一人ひとりがデザイン経営を実践しているともいえるのが英ダイソンだ。同社CEOのジム・ローウェン氏は3月28日に開催した日経ビジネス主催の対話イベント「Raise Live」で、「我々のデザインアイコン(偶像)はホンダの『スーパーカブ』とソニーの初代『ウォークマン』だ」と語った。

 そもそも日本企業は、現場、現物、現実を重視する“三現主義”など、顧客と向き合い、潜在的なニーズから革新的な製品を生み出す、デザイン思考的なプロセスを重視していた。だが、「規模が拡大するにつれてデザインの機能が切り離され、弱くなっていった」(Takram田川氏)。

 短期的な業績を追求するプレッシャーが高まる中、経営層から現場まで、ビジネスパーソンはデザインをつかさどる“右脳”の役目を忘れがちだ。「デザイン経営」を旗印に、“左脳”に偏った会社にバランスを取り戻すことは、閉塞感を打破する一つの解になる。

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「左脳」に偏った経営をデザインが変える
●経営における「左脳」的側面と「右脳」的側面のイメージ
「左脳」に偏った経営をデザインが変える<br> <small>●経営における「左脳」的側面と「右脳」的側面のイメージ</small>
(写真=PIXTA)
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日経ビジネス2019年4月22日号 50~54ページより目次
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