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イノベーションの停滞を打破するための新手法として、「デザイン経営」が注目されている。経済産業省と特許庁が提言したり、経営層にデザイナーを招へいする企業が出てきたり、動きが活発だ。「デザインを経営に生かす」には、どうしたらよいのか。読者とともに取材し、考えた。

HAKUHODO DESIGNの永井一史社長(左から2人目)は「現代の経営ではますますデザインが重要になってきている」と語った(写真=竹井 俊晴)
DG TAKANOの高野雅彰社長(奥、中央)は、「日本の大企業に本当に『デザイン思考』が浸透したら、すごいことになる」と期待する(写真=都築 雅人)
2月上旬に開いたオープン編集会議キックオフイベントでは、Takram代表の田川欣哉氏(左から3人目)らを交えて議論した
英ダイソンのジム・ローウェンCEO(右)を迎えて開催した「Raise Live」では、デザインの力でイノベーションを起こす秘訣が語られた

 デザインに投資する企業が、高いパフォーマンスを発揮している──。昨年5月、経済産業省と特許庁がまとめた報告書「『デザイン経営』宣言」はそう強調する。米英の株式市場を例に、デザインを重視する企業では、そうでない企業と比較して株価の伸びが顕著に大きいことが根拠だ。そして、こう指摘する。

 「日本の経営者がデザインに積極的に取り組んでいるとは言い難い」

 優れたデザインで革新的な製品をヒットさせてきた米アップルや英ダイソンなどと比べると、最近の日本企業の存在感は小さい。イノベーションが停滞しているとの指摘もある。しかし、ここにきて日本でも、アップルやダイソンに見習うように、「デザイン」の力で閉塞感を打破しようという機運が高まっている。

 「『デザイン経営』宣言」の取りまとめにも協力したデザインエンジニアリングを手掛けるTakram(東京・渋谷)には、トヨタ自動車やメルカリなど、企業規模を問わず協業案件が数多く舞い込んでくる。ただし、単純に製品やサービスの“見た目”を良くするための依頼ではない。同社の田川欣哉代表は「多くの企業が、デザインを経営に生かそうとし始めている」と話す。

 しかし、「デザインを経営に生かす」とは具体的にどういうことか、日々、デザインと縁遠い仕事をしている一般のビジネスパーソンには分かりにくい。そこで日経ビジネスは、読者の声をアクションにつなげる議論の場「Raise」を使い、読者と一緒に取材をしたり議論したりする「オープン編集会議」プロジェクトを実施した。

 2月に参加メンバーを公募・選抜し、田川氏らを招いて編集会議を開催。「デザイン経営が大切と言っても、いまひとつ、ふに落ちない」(参加者の一人、鷹野雅央氏)といった意見が相次いだ。そこで、デザインを経営に生かしている企業への取材を進めることにした。

日経ビジネスRaise「オープン編集会議」とは

読者の声をアクションにつなげる議論の場「日経ビジネスRaise」のプロジェクト。公募・選抜した「オープン編集会議メンバー」が一部の取材や編集会議に参加。Raiseでの議論を記事に反映する。今回のテーマ「デザイン経営を考える」は、イノベーション支援を手掛けるロフトワーク(東京・渋谷)やGOOD DESIGN AWARDを主催する日本デザイン振興会(東京・港)の協力を得た。

Raiseのディスカッション「デザイン経営を考える」に参加する



●オープン編集会議「デザイン経営を考える」メンバー(50音順、敬称略)
新井 秀美(パロット行政書士事務所)瀧本 裕子(イノベーションブリッジ)
石川 裕樹(ディーバ)塚田真一郎(日本デザイン振興会)
今井 裕平(kenma)富田 誠(東海大学)
岡田恵利子(はこだて未来大学)中村 徳男(資生堂)
尾方 里優(ロフトワーク)波村 美絵(MI-ZA)
尾崎 尚武(資生堂)林 千晶(ロフトワーク)
河本 雄太(SecondStage)丸尾 弘志(日経BP総研)
國枝 将大(フィンランドのアアルト大学)水嶋玲以仁(グローバル・インサイト)
佐藤 敏明(日本電気)三輪 愛(ミニストップ)
鈴木 潤子(三井物産メタルズ)矢島 進二(日本デザイン振興会)
鷹野 雅央(タカノ)Lee Corey(The Collective)
高野 葉子(グッドパッチ)鷲尾 有美(コクヨ)
高橋 龍征(早稲田大学)渡部 晋也(ロフトワーク)
田川 欣哉(Takram)

※発言内容は個人の意見であり、所属する企業や団体を代表するものではありません

日経ビジネス2019年4月22日号 50~54ページより目次